カリキュラム — Level 1〜5 学習ロードマップ¶
なぜ体系的なカリキュラムが必要か(Why → What → How)¶
Why(なぜ) — 5GCは、AMF/SMF/UPFといった多数の Network Function(NF)が、SBA(Service-Based Architecture)上で連携して動く仕組みです。個々の用語を単発で覚えても、「どの順で学ぶか」を誤ると全体像が結び付かず、仕様書を読んでも迷子になります。
What(何か) — このカリキュラムは、5GCの概要(Level 1)から始め、基本手順(Level 2)→ モビリティ(Level 3)→ サービス(Level 4)→ 応用/最新(Level 5)へと、前提知識が積み上がる順に並べた5段階のロードマップです。
How(どうやって) — まず下の全体像で自分の現在地を確認し、各Levelの「学習目標・主なトピック・前提Level」を見て進む順を決めます。初心者は Level 1 から、経験者は必要なLevelから入ってください。
全体像(Level 1 → Level 5)¶
flowchart TD
L1["Level 1
5GC概要 / SBA / NF"] --> L2["Level 2
Registration / Auth / PDU Session / QoS"]
L2 --> L3["Level 3
Mobility / Handover / Paging / Interworking"]
L3 --> L4["Level 4
VoNR / SMS / Emergency / Slice / RedCap"]
L4 --> L5["Level 5
Charging / Policy / NWDAF / Roaming / Rel17-18"]
L1 -.- L1t["Mobile Network / LTE / Interface"]
L2 -.- L2t["Security / セッション確立"]
L3 -.- L3t["Idle / Connected / N26"]
L4 -.- L4t["Network Slice / 音声"]
L5 -.- L5t["CAPIF / NEF / Analytics"]
各Levelの詳細¶
Level 1 — Mobile Network概要 / 5GC概要¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習目標 | モバイルネットワークの全体像と、5GCの土台となるアーキテクチャ(SBA)を理解する |
| 前提Level | なし(ここが出発点) |
主なトピック
- モバイルネットワーク概要(LTE/EPCまで)
- 5GC概要とSBA(Service-Based Architecture)
- Network Function(NF)総論
- Interface / Protocol 総論
このLevelの進め方
4G/LTE の地図(モバイルネットワーク概要)から入り、5GC概要とSBA で 5GC の設計思想をつかみ、NF総論 と Interface / Protocol 総論 で構成部品を俯瞰する、という順がおすすめです。個別の NF・参照点は各詳細ページと辞典で深掘りできます。
Interface / Protocol の補足
N1/N2 は制御プレーン、N3(gNB–UPF)/N6(UPF–DN)はユーザプレーン、N4 は SMF–UPF 間(PFCP)です。 NFどうしが HTTP/2 で連携する SBI(Service-Based Interface、Namf/Nsmf/Nudm 等のサービスベースIF) が別途存在します(TS 23.501 §4)。 ユーザプレーンのパケットは GTP-U でカプセル化され N3 上を運ばれます。
先に用語を引きたいとき
NF・Interface・Protocol の名前は 辞典 で先取りできます。
Level 2 — 基本手順(Registration / セッション)¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習目標 | UEがネットワークに登録し、通信路(PDU Session)を確立するまでの基本手順を、Call Flowで追えるようになる |
| 前提Level | Level 1 |
主なトピック
- Registration(初回登録)
- Authentication(認証)
- Security(セキュリティ)
- PDU Session(PDUセッション確立)
- PDU Session Modification / Release(変更・解放)
このLevelの進め方
まず Registration(初回登録) で UE がネットワークに登録するまでを追い、続く認証・セキュリティ・PDU Session へ進むと、通信路が開くまでの一連の流れがつながります。各章に Call Flow図・Wireshark実例・理解度チェックがあります。QoS(5G QoSモデル)は Level 3 に配置しています。
認証とセキュリティの関係
Authentication(5G-AKA / EAP-AKA') と NAS/AS Security(鍵階層・暗号化・完全性保護) は別トピックですが、実際には Registration 直後に連続して起きる一連の流れです。加入者識別子は SUPI をそのまま送らず、公開鍵で秘匿した SUCI として送信されます(TS 33.501)。
経験者はここから
手を動かして理解したい方は、まず Registration(初回登録) をどうぞ。5GCの中心的な手続きで、他の多くの章の土台になります。
Level 3 — モビリティ(Mobility)・QoS¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習目標 | UEが移動しても通信が途切れない仕組み(Mobility/Handover)と、5G QoSモデル・ネットワークスライシングを理解する |
| 前提Level | Level 2 |
主なトピック
- Handover(ハンドオーバー)
- Paging(ページング)
- Service Request(サービスリクエスト)
- RRC Resume / Small Data(軽量復帰)
- Mobility Registration Update(モビリティ登録更新)
- Periodic Registration Update(周期登録更新)
- QoS(5G QoSモデル)
- Network Slicing(ネットワークスライシング)
- 4G-5G Interworking(N26 / 4G EPCとの相互接続)
- EPS Fallback(5G→4Gへ切り替えて音声を成立させる仕組み)
このLevelの進め方
まず Handover と Paging で「移動しても切れない・呼び出せる」仕組みをつかみ、Service Request / RRC Resume や登録更新系(Mobility / Periodic)へ広げます。QoS・スライスは QoS / Network Slicing で押さえましょう。4G/5G間連携に関心があれば N26 Interface・Interworking・EPS Fallback が中核です。
EPS Fallback とは
5Gの初期展開では VoNR が未提供のエリアが多く、音声着発信時に UE を一時的に 4G(EPS)へ落として音声を成立させる EPS Fallback が実運用上ほぼ必須です(TS 23.502 §4.13.6.1)。
Level 4 — サービス/デバイス種別(Voice / Slice / RedCap など)¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習目標 | 音声・緊急通報・ネットワークスライス等の主要サービスと、RedCap等のデバイス種別を理解する |
| 前提Level | Level 2。加えて、音声(VoNR/Emergency)は Level 3(モビリティ)の理解も推奨 |
主なトピック
- VoNR(Voice over NR)
- EPS Fallback(5G→4Gへ切り替えて音声を成立)
- SMS(Short Message Service)
- Emergency(緊急通報)
- RedCap(Reduced Capability, Rel-17)
このLevelの進め方
音声系(VoNR / EPS Fallback / Emergency)は関連が深いのでまとめて読むと理解が進みます。制御プレーンで運ぶ SMS、デバイスカテゴリの RedCap は独立して読めます。ネットワークスライスは Level 3 の Network Slicing を参照してください。
VoNR / Emergency は IMS 前提
VoNR と Emergency(音声)は IMS(IP Multimedia Subsystem) を前提とし、音声は QoS Flow と結びつきます(5QI=1: 会話音声、5QI=5: IMSシグナリング。TS 23.501 §5.7.4 標準化5QI表)。VoNRが使えないエリアでは Level 3 の EPS Fallback で音声を成立させます。
RedCap はサービスではなくデバイスカテゴリ
RedCap は SMS/VoNR のような 5GC が提供するサービスではなく、UE能力を削減したデバイスカテゴリ(Reduced Capability, Rel-17) です。低コスト・低消費電力の中位IoT向けに、帯域幅やアンテナ数などのUE能力を意図的に絞った端末種別を指します。
Level 5 — 応用 / 最新リリース¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学習目標 | 課金・ポリシー・データ分析・ローミング等の応用領域と、Rel-17/18の最新機能を俯瞰する |
| 前提Level | Level 1〜4(トピックにより異なる) |
主なトピック
- Charging(課金)
- Policy(ポリシー制御 / PCF)
- NWDAF(データ分析 / Analytics)
- Roaming(ローミング / SEPP・N32)
- NEF・CAPIF(ネットワーク能力公開)
- Security応用(5GCセキュリティ応用)
- Rel-17 & Rel-18(5G-Advanced)
- Location Service(LCS / GMLC・LMF)
このLevelの進め方
応用領域は独立性が高いので、興味のあるトピックから読めます。課金・ポリシーは Charging / Policy、データ分析は NWDAF、事業者間連携は Roaming、外部公開は NEF・CAPIF、最新機能は Rel-17 & Rel-18、測位は Location Service が入口です。
Analytics と NWDAF の関係
Analytics(データ分析)と NWDAF は別項目に見えますが、NWDAF(Network Data Analytics Function)は Analytics を担う NF そのものであり、他NFへ分析結果を提供するサービスベースIF Nnwdaf を公開します(TS 23.288)。詳細は NWDAF章 を参照してください。
学習を始める・調べる¶
各Levelの「主なトピック」から、気になる章に直接進んでください。初めての方は Level 1 から順に、4G/LTE の経験がある方は Level 2 の Registration(初回登録) から手を動かすのがおすすめです。
用語をすぐ引きたいときは 辞典 を、NF・Interface の詳細は AMF 等のNF個別ページや N2 等のInterface個別ページを併用すると理解が深まります。