Network Function(NF)総論¶
学習目標¶
この章を読み終えると、次のことができるようになります。
- Network Function(NF) が「機能をソフトウェア部品として切り分けた単位」であることを説明できる
- なぜ 5GC が機能を NFに分ける のか(スケール・独立更新・ベンダ混在)を説明できる
- NFを 制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系 に分類できる
- 主要16NF(AMF, SMF, UPF … AF)の役割を1行で言え、個別ページへたどれる
- NFインスタンス / NFサービス / discovery(NRF) の関係を直感的に説明できる
前提知識¶
- 5GC概要とSBA — SBA(Service Based Architecture)・SBI・NRF の初出解説。本章はこれを前提に「NFの側から」見ます
この章で学べること¶
- Why — なぜ機能を一体的なノードではなく NF に分けるのか
- Overview — NFという単位と分類の地図
- Basic Concept — 会社の部署分担にたとえる
- 本論 — NFとは / 分類の地図 / 主要NF一望表 / NFインスタンスとサービスとdiscovery
- EPCとの比較 — 一体的ノード(LTE)→ 細分化NF(5GC)
- 各NFの深い解説は個別ページ(例: AMF)と NF辞典 に委ねます
Why — なぜ機能をNFに分けるのか¶
5GC の役割は「端末を認証し、セッションを張り、データを運び、ポリシーや課金を適用する」ことです。これらを 1つの巨大なノード に詰め込むこともできますが、現代の要求には合いません。そこで 5GC は、機能を Network Function(NF) という独立したソフトウェア部品に切り分けました。分ける理由は主に3つです。
- スケール(拡張性) — 混み合う機能だけを増やせる。例えば登録処理(AMF)が逼迫したら AMF だけを増設でき、データ転送(UPF)はそのままにできる
- 独立更新 — ある機能を直しても他に波及しにくい。認証ロジック(AUSF/UDM)だけを更新し、他NFを止めずに済む
- ベンダ混在(マルチベンダ) — NF間のやり取りが標準化された SBI で行われるため、AMF はA社・SMF はB社、のように組み合わせられる
つまりNFは「機能ごとに部品化して、必要なところだけ増減・更新・入れ替えできるようにする」ための単位です。この部品化を支えるのが SBA(Service Based Architecture)であり、詳細は 5GC概要とSBA を参照してください。
Overview — 概要¶
5GC は多数の NF が協調して動くシステムです。本章では次の順に「地図」を描きます。
- NFとは — 機能をソフト部品として分けた単位。実体は物理装置というより、仮想化基盤の上で動くソフトウェア
- 分類 — NFは役割から大きく4系統に分けて捉えると見通しがよい(制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系)
- 主要NF一望表 — 16NFを「役割1行+個別ページリンク」で俯瞰
- NFインスタンス / NFサービス / discovery — NFが複数実体(インスタンス)を持ち、機能を サービス として公開し、互いを NRF で見つけ合う
この章の立ち位置
本章は「地図」に徹します。各NFの提供API・関連Interface・Spec章番号まで持つ精密版は NF辞典、参照点やプロトコルは Interface / Protocol 総論 に委ねます。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
会社の部署分担にたとえる¶
5GC を1つの 会社 だと思ってください。会社は仕事を「部署」に分けます。
- 受付・総合窓口(AMF)— 来客(端末)の応対と、社内の担当部署への取り次ぎ
- 契約・回線手配(SMF)— どの回線をどう引くかを手配し、現場(UPF)に指示
- 配送現場(UPF)— 実際に荷物(ユーザデータ)を運ぶ
- 人事・名簿管理(UDM/UDR)— 誰が社員(加入者)かを管理
- 警備・本人確認(AUSF)— 入館者が本人かを確かめる
- 社内規則(PCF)— どこまで許すか(QoS・課金・アクセス)のルール
- 社内電話帳(NRF)— どの部署に頼めばよいかを引く名簿
もし全部の仕事を1人(1つの巨大ノード)にやらせると、受付が混んだだけで会社全体が止まります。部署(NF)に分けておけば、混んだ部署だけ増員でき、ある部署のやり方を変えても他部署は動き続け、部署ごとに別の外注先(ベンダ)を使えます。これが 5GC を NF に分ける発想です。部署どうしのやり取りの作法が標準化(SBI)されているから、混在が成り立ちます。
NFとは — 機能を切り分けた単位¶
Network Function(NF) とは、5GC の機能を独立したソフトウェア部品として切り分けた単位です。3GPP は NF を TS 23.501 §6.2 系で定義しています。要点は次の通りです。
- NFは「役割(機能)」の単位であり、物理装置と1対1とは限らない。仮想化・クラウド基盤の上で複数の実体として動くことが一般的
- NF間のやり取りは、SBA では SBI(Service Based Interface) を通じた サービス の呼び出しで行われる(HTTP/2 + JSON ベース)
- NFは自分の機能を NFサービス として公開し、他NFはそれを 消費(consume) する。誰が誰を呼ぶかは固定配線ではなく、NRF を通じて動的に見つけ合う
NF=箱ではなく役割
「AMFという1台の装置がある」と考えるより、「AMFという役割を担うソフトウェアが、必要な数だけ動いている」と捉える方が 5GC の実態に近いです。この“実体”を NFインスタンス と呼びます(後述)。
分類の地図 — NFを4系統で捉える¶
16のNFを一度に覚えるのは大変です。まず役割から 4系統 に束ねると見通しがよくなります。
graph TD
NF["Network Function(NF)"]
NF --> CP["制御プレーン系
(つなぐ・張る・選ぶ)"]
NF --> DM["データ管理系
(加入者/データを持つ)"]
NF --> UP["ユーザプレーン
(データを運ぶ)"]
NF --> EA["公開・分析・補助系
(外部連携/分析/課金)"]
CP --> CP1["AMF / SMF / AUSF
PCF / NRF / NSSF"]
DM --> DM1["UDM / UDR"]
UP --> UP1["UPF"]
EA --> EA1["NEF / NWDAF / CHF
BSF / SMSF / SEPP / AF"]
図の読み方: これは「役割の似たものを束ねた地図」であり、3GPP が定めた公式分類ではありません(暗記の足場です)。実際には PCF はポリシー、NRF は発見、NSSF はスライス選択…と役割が異なるため、束ねた中身は下の一望表で1行ずつ確認してください。
- 制御プレーン系 — 端末をつなぎ、セッションを張り、認証し、ポリシーを決め、どのNFに頼むかを選ぶ(AMF / SMF / AUSF / PCF / NRF / NSSF)
- データ管理系 — 加入者情報やポリシーデータを保持する(UDM / UDR)
- ユーザプレーン — 実データを転送する唯一のNF(UPF)
- 公開・分析・補助系 — 外部との仲介、分析、課金、結合情報、SMS、PLMN間保護、アプリ連携(NEF / NWDAF / CHF / BSF / SMSF / SEPP / AF)
主要NF一望表 — 16NFを俯瞰する¶
各NFの役割を1行で示し、深掘りは個別ページへリンクします。役割の言い回しは NF辞典 と整合させています。提供API・関連Interface・Spec章番号まで引きたいときは辞典へ。
| NF | 正式名(略) | 役割(1行) | 個別ページ | 分類 |
|---|---|---|---|---|
| AMF | Access and Mobility Management Function | N1・N2終端、登録・接続・モビリティ管理 | AMF | 制御プレーン系 |
| SMF | Session Management Function | PDUセッション管理、UPF制御(N4) | SMF | 制御プレーン系 |
| AUSF | Authentication Server Function | 認証(5G-AKA / EAP-AKA')サーバ | AUSF | 制御プレーン系 |
| PCF | Policy Control Function | ポリシー制御(QoS・課金・アクセス制御ルール) | PCF | 制御プレーン系 |
| NRF | Network Repository Function | NFの登録・発見(Discovery)・選択支援 | NRF | 制御プレーン系 |
| NSSF | Network Slice Selection Function | ネットワークスライス選択支援(NSSAI解決) | NSSF | 制御プレーン系 |
| UDM | Unified Data Management | 加入者データ管理・認証情報生成 | UDM | データ管理系 |
| UDR | Unified Data Repository | 加入者・ポリシー等のデータ格納リポジトリ | UDR | データ管理系 |
| UPF | User Plane Function | ユーザプレーン処理(パケット転送・QoS適用・課金計測) | UPF | ユーザプレーン |
| NEF | Network Exposure Function | 外部AFへの能力公開・情報仲介 | NEF | 公開・分析・補助系 |
| NWDAF | Network Data Analytics Function | ネットワークデータ分析・予測 | NWDAF | 公開・分析・補助系 |
| CHF | Charging Function | 課金(オンライン/オフライン)機能 | CHF | 公開・分析・補助系 |
| BSF | Binding Support Function | セッションとPCFの結合(Binding)情報管理 | BSF | 公開・分析・補助系 |
| SMSF | Short Message Service Function | NAS経由のSMS配送機能 | SMSF | 公開・分析・補助系 |
| SEPP | Security Edge Protection Proxy | PLMN間SBIシグナリングのエッジ保護(N32) | SEPP | 公開・分析・補助系 |
| AF | Application Function | アプリ側機能(NEF経由またはPCF直結で連携) | AF | 公開・分析・補助系 |
分類はあくまで学習用の足場
上表の「分類」列は本章の学習用の束ね方です。3GPP が §6.2 に定める公式カテゴリではありません。役割・提供API・関連Interfaceの厳密な定義は各個別ページと NF辞典 を正とします。
NFインスタンス / NFサービス / discovery¶
NFを実運用の視点で見ると、3つの言葉が要になります。
NFインスタンス — NFの“実体”¶
NFインスタンス(NF Instance) は、あるNF(役割)を実際に動かしている個々の実体です。1つのNF種別が複数のインスタンスを持てます(例: 負荷分散のためAMFインスタンスを3つ動かす)。各インスタンスは一意な NF Instance ID を持ち、NRFに登録されます。
NFサービス — NFが公開する機能の単位¶
NFサービス(NF Service) は、NFが SBI 経由で他NFに提供する機能の単位です。1つのNFが複数のサービスを提供します。例えば AMF は Namf_Communication や Namf_EventExposure といったサービスを公開します(サービス名の一覧は NF辞典 参照)。他NFはこれを 消費(consume) して機能を使います。
discovery — NRFで互いを見つける¶
NF同士は固定配線ではなく、NRF(Network Repository Function) を通じて動的に相手を探します。この流れを直感で押さえます。
sequenceDiagram
participant SMF as NFインスタンス(例: SMF)
participant NRF as NRF
participant AMF as NFインスタンス(例: AMF)
Note over AMF,NRF: 起動時
AMF->>NRF: NF Register(自分のprofileを登録)
Note over SMF,NRF: 相手が必要になったとき
SMF->>NRF: NF Discovery(条件に合うAMFを問い合わせ)
NRF-->>SMF: 該当するAMFインスタンスの情報を返す
SMF->>AMF: SBIでサービスを呼び出す
- 登録(Register) — 各NFインスタンスは起動時に、自分の情報を NF profile として NRF に登録する
- 発見(Discovery) — あるNFが相手を必要としたとき、条件(NF種別・スライス・地域など)を指定して NRF に問い合わせ、該当インスタンスを教えてもらう
- 選択(Selection) — 返ってきた候補から、実際に呼ぶインスタンスを選ぶ
NF profile とは
NF profile は、NRF に登録される「そのNFインスタンスの自己紹介カード」です。NF種別・NF Instance ID・提供するNFサービス・対応スライス(S-NSSAI)・接続先アドレスなどを含みます。Discovery はこの profile を条件で絞り込む仕組みだと捉えると分かりやすいです。NRF・SBA そのものの詳細は 5GC概要とSBA を参照してください。
EPCとの比較 — 一体的ノードから細分化NFへ¶
5GC の NF 分割の意義は、LTE のコア網 EPC(Evolved Packet Core) と対で見ると分かりやすくなります。
| 観点 | EPC(LTE) | 5GC |
|---|---|---|
| 機能の単位 | MME / SGW / PGW など、機能が比較的一体的なノード | 機能を細かく分けた多数のNF |
| ノード間IF | 各IFが個別プロトコル(GTP-C, Diameter 等)で固定的 | SBI で統一(HTTP/2)、動的に discover |
| 制御とユーザ面 | PGW等で制御と転送が結びつきがち | SMF(制御)と UPF(転送)を明確に分離(CUPS の発展) |
| 拡張・更新 | ノード単位でまとまって増減 | NF単位で個別にスケール・更新・ベンダ混在 |
例えば LTE の PGW が担っていた「セッション制御+ユーザデータ転送」は、5GC では SMF(制御) と UPF(転送) に分かれました。制御と転送を分けたことで、転送だけを端末に近い場所(エッジ)に置く、といった柔軟な配置ができます。EPCと5GCのより詳しい対応は Interface / Protocol 総論 や各個別ページを参照してください。
3GPP Specification¶
- NF の定義 — TS 23.501 §6.2 系(5G System Architecture)。各NFの機能記述が §6.2.x に置かれる(例: AMF=§6.2.1, SMF=§6.2.2, UPF=§6.2.3, UDM=§6.2.7, AUSF=§6.2.8, NRF=§6.2.6)。番号は NF辞典 と一致させています
- 注記 — CHF は TS 23.501 §6.2 に独立節を持たず(定義は課金系 TS 32.290 等)、BSF も §6.2 に節がなく TS 23.503(PCC framework)で定義されます。個別の§6.2.x番号を引くときは辞典の値を正としてください
- SBA・SBI・discovery 手続きの詳細な仕様は 5GC概要とSBA および関連Specへ
章番号の扱い
本章では基幹NFの §6.2.x を辞典と整合する範囲でのみ示しています。自信の持てない番号は本文に書かず、NF辞典 の該当行を参照してください(辞典は ETSI 公開版 Rel-17 で裏取りされた値を持ちます)。
FAQ¶
Q. NFは物理的な装置ですか? それともソフトウェアですか? A. 実運用ではソフトウェアとして捉えるのが実態に近いです。NFは「役割」の単位で、仮想化・クラウド基盤の上で複数の NFインスタンス として動きます。物理装置と1対1ではありません。
Q. NFが16個もあって覚えられません。 A. まず4系統(制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系)に束ね、代表格(AMF, SMF, UPF, UDM, PCF, NRF)から押さえるのがおすすめです。残りは必要になったとき一望表と個別ページで確認すれば十分です。
Q. NF同士はどうやって相手を見つけるのですか? A. NRF に問い合わせます。各NFは起動時に自分の NF profile を NRF へ登録し、相手が必要なNFは条件を指定して NRF に discover を依頼し、該当インスタンスを教えてもらいます。
Q. 「NFインスタンス」と「NFサービス」はどう違いますか?
A. NFインスタンスは「そのNFを動かしている実体(1個・2個…と数えられる)」、NFサービスは「そのNFが SBI で公開する機能の単位(Namf_Communication など)」です。1つのインスタンスが複数のサービスを提供します。
Q. この分類は3GPPの公式カテゴリですか? A. いいえ。本章の4系統分類・一望表の「分類」列は学習用の足場です。3GPP の定義(TS 23.501 §6.2)を正とし、厳密な役割は NF辞典 と個別ページで確認してください。
Summary¶
- NF(Network Function) は 5GC の機能をソフト部品として切り分けた単位(TS 23.501 §6.2 系で定義)
- NFに分ける理由は スケール・独立更新・ベンダ混在。これを支えるのが SBA / SBI
- NFは学習上 制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系 の4系統で捉えると見通しがよい
- 主要16NF(AMF〜AF)は役割1行+個別ページで俯瞰し、詳細は NF辞典 と個別ページへ
- NFは複数の NFインスタンス として動き、機能を NFサービス として公開し、NRF を通じて互いを discover する
- EPCの一体的ノードに比べ、5GCは機能をNFに細分化し、制御(SMF)と転送(UPF)も分離した
Practice — 理解度チェック・演習¶
理解度チェック¶
Q1. 5GC が機能をNFに分ける主な理由を3つ挙げてください。
スケール(混んだ機能だけ増やせる)、独立更新(ある機能を直しても他に波及しにくい)、ベンダ混在(NFごとに別ベンダを組み合わせられる) の3つです。これを支えるのが SBI による標準化されたやり取りです。
Q2. 「NFインスタンス」と「NFサービス」の違いを一言で述べてください。
NFインスタンスは「NFを動かしている実体(数えられる)」、NFサービスは「NFが SBI で公開する機能の単位(Namf_Communication 等)」です。1インスタンスが複数サービスを提供します。
Q3. NFが相手のNFを見つけるとき、何に問い合わせますか?
NRF(Network Repository Function) です。各NFは起動時に自分の NF profile を登録し、相手が必要なNFは条件を指定して discover を依頼します。
Q4. LTEのPGWが担っていた機能は、5GCではどのNFに分かれましたか?
セッション制御を担う SMF と、ユーザデータ転送を担う UPF に分かれました。制御と転送の分離により柔軟な配置が可能になります。
演習¶
- 一望表の16NFを、見ずに4系統へ振り分けてみましょう。詰まったら表の「分類」列で答え合わせを。
- 会社の部署分担のたとえを使って、家族に「なぜ5GCは機能をNFに分けるのか」を1分で説明してみましょう。
- 気になったNFを1つ選び、その個別ページ(例: AMF)を開いて、役割1行がどこまで具体化されているか確かめてみましょう。