SMF — Session Management Function¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- SMFが5GCで果たす役割(PDUセッション管理・UPF制御)を一言で説明できる。
- SMFがどのInterface(N4/N7/N10/N11相当 ほか)を終端し、どのNFと連携するかを図示できる。
- CUPS(制御プレーンSMFと転送プレーンUPFの分離)における「制御側」としてのSMFの位置づけを説明できる。
- SMFがUPFをN4(PFCP)でどう制御し、IPアドレス割当やQoSをどう扱うかを説明できる。
- PDU Session Establishment手続きの中でSMFがどう動くかの概要を説明できる(詳細はPDU Session章へ)。
- 4G(EPC)のPGW-C/SGW-C(+MMEの一部)との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA(Service Based Architecture)とNF、SBIの基礎 → カリキュラム
- PDUセッションの全体像(SMFが主役の手続き) → PDU Session Establishment
- NASの位置づけ(SM NASもここを通る) → Protocol辞典
- AMFの役割(SM NASをSMFへ中継する相手) → AMF
この章で学べること¶
まずWhy(SMFが無いと何が困るか)から入り、What(SMFの役割・保持情報・API)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(PDUセッション確立での登場、EPC比較、参照Spec)へと進みます。
本ページはSMFのNFとしての役割・SBIサービス・アーキ位置に焦点を当てます。PDU Session Establishment の手順の詳細(Call Flow、QoS Flow、N4/N3の2段確立など)は PDU Session Establishment に集約しているため、そちらへ誘導します。
「N11相当」という表記について
本サイトでは AMF⇔SMF 間を「N11相当(Namf/Nsmf)」と表記します。3GPPのアーキテクチャ図では参照点として N11 が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として Namf/Nsmf のSBIサービスとして実装されるためです(詳細は Interface節)。
Why — なぜ必要なのか¶
UEが登録(Registration)し認証(Authentication)を済ませても、それだけではユーザデータは流れません。実際にデータを通すには、UEからUPF(User Plane Function)を経由してDN(Data Network)へ抜ける論理的なパイプ(PDUセッション)を張り、維持し、いずれ解放する必要があります。このセッションのライフサイクルを一手に管理する専任のNFが必要です。これがSMFです。
もう一つの鍵がCUPS(Control and User Plane Separation、制御と転送の分離)です。5Gでは「セッションをどう張り、どう転送させるか」を決める制御(頭脳)と、実際にパケットを流す転送(土管)を明確に分けました。SMFが制御側(頭脳)、UPFが転送側(土管)です。SMFが無いと、UPFに「このパケットをこう転送しろ」と指示する主体がおらず、土管はただの空の管のままです。
例え話: SMFは工場の生産ライン管理者(ラインマネージャ)です。マネージャ自身がベルトコンベア(UPF)で物を運ぶわけではありませんが、「どのラインを立ち上げ、どの速度・優先度で流し、どこへ出荷するか」を決め、現場(UPF)に指示書(N4/PFCPのルール)を渡します。運ぶのは現場、決めるのはマネージャ、という指揮と実行の分業がCUPSです。
Overview — 概要¶
SMF(Session Management Function)は、PDUセッションのライフサイクル管理を担う制御プレーンのNFです。UEからのセッション管理NAS(SM NAS / 5GSM)をAMF経由で受け取って終端し、UPFの選択とN4(PFCP)によるUPF制御、UEへのIPアドレス割当、PCFと連携したQoS/課金ポリシー(PCC: Policy and Charging Control)の適用を行います。CUPSにおける制御側であり、転送はUPFに委ねて「こう転送しろ」と指示することに徹します。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
SMFを、旅行の手配担当(コーディネータ)に例えます。あなた(UE)が「目的地(DN)まで行きたい」と申し込む(PDUセッション要求)と、手配担当(SMF)が動き出します。まず契約内容(加入者データ)を人事窓口(UDM)に確認し、必要ならサービス品質のルール(QoS/課金ポリシー)を規約部門(PCF)に問い合わせます。そのうえでどの交通手段(どのUPF)を使うかを選び、あなたの座席番号(IPアドレス)を割り当て、運行会社(UPF)へ運行指示書(N4/PFCPのルール)を渡します。
ここで押さえるべきは、手配担当(SMF)は自分で運転はしないという点です。実際にパケットを運ぶのはUPF。SMFは「誰を・どこへ・どの品質で運ぶか」を決めて指示するだけ、という分業(CUPS)になっています。
SMFが管理する主なものは次の4つです。
- PDUセッション … データを運ぶ論理パイプ。確立・変更・解放の全ライフサイクルを管理。
- UPFの制御 … どのUPFを使うか選び、N4(PFCP)で転送ルールを設定。
- IPアドレス … UEに割り当てるIP(PDUセッションごと)の管理。
- QoS/課金ポリシー … PCFから受けたルール(PCC rule)をUPFへ落とし込む。
Network Function 詳細¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | PDUセッションのライフサイクル管理(確立/変更/解放)。SM NAS(5GSM)の終端。UPF選択とN4(PFCP)によるUPF制御。UEへのIPアドレス割当。PCF連携によるQoS/課金ポリシー(PCC)適用。CUPSの制御側。 |
| 保持情報 | SMコンテキスト(PDU Session ID, UE IPアドレス, (DNN, S-NSSAI), 選択UPF情報, QoS Flow(QFI/5QI), PCC rule, セッション状態 等) |
| 利用する主なAPI(他NFへ呼ぶ) | Nudm(SDM: セッション管理加入データ取得, UECM: 登録), Npcf(SMPolicyControl), Nnrf(Discovery: UPF/PCF選択支援), Nchf(課金 ※実装/構成依存) |
| 提供するAPI(自分が公開) | Nsmf(PDUSession, EventExposure 等)— 3GPP TS 29.502 |
| 制御するプロトコル | N4上の PFCP(UPFへ PDR/FAR/QER 等の転送規則を設定)— 3GPP TS 29.244 |
| 関連Interface | N4(UPF), N7(PCF), N10(UDM), N11相当(AMFとのNamf/Nsmf), N40(CHF ※任意/実装依存) |
| 障害時の影響 | PDUセッションの確立・変更・解放が不可となり、配下UEはデータ通信できない(重大) |
SM NAS(5GSM)の終端について: UEのセッション管理メッセージ(PDU Session Establishment Request 等)は SM NAS(5GSM) で、MM NAS(5GMM)の中にネストされてN1を通ります。AMFはこのSM NASの中身を解釈せず、SMF選択(SMF selection)を行ってSMFへ中継します。SM NASを実際に終端・処理する主体はSMFです(根拠 TS 24.501 §6.4 / TS 23.502 §4.3.2.2。章番号は版により変動、要確認)。
Architecture¶
SMFは5GC制御プレーンでPDUセッション管理の司令塔として位置し、AMFから要求を受け、UPFを制御し、UDM/PCF/CHFと連携します。
flowchart LR
AMF["AMF"]
SMF["SMF"]
UPF["UPF (転送)"]
UDM["UDM"]
PCF["PCF"]
CHF["CHF (課金)"]
DN[(Data Network)]
AMF -- "N11相当 (Namf/Nsmf)" --> SMF
SMF -- "N10 (Nudm)" --> UDM
SMF -- "N7 (Npcf)" --> PCF
SMF -- "N40 (Nchf) ※任意" -.-> CHF
SMF == "N4 (PFCP)" ==> UPF
UPF == "N6" ==> DN
図の読み方: SMFはAMFから(N11相当のNamf/Nsmf経由で)SM NASとセッション要求を受け取ります。UDM(N10)で加入データを、PCF(N7)でQoS/課金ポリシーを取得し、必要に応じてCHF(N40)へ課金連携します。そのうえでN4(PFCP)でUPFを制御(太線)し、UPFがN6でDNへパケットを転送します。SMFは制御に徹し、実データはUPF側(太線区間)を流れる点がCUPSの要です。
Interface¶
SMFが終端する主なInterfaceと役割です。
| Interface | 両端 | Protocol | 役割 |
|---|---|---|---|
| N4 | SMF ⇔ UPF | PFCP(UDP) | UPFへの転送規則設定(PDR/FAR/QER)。CUPSの制御↔転送インターフェース |
| N7 | SMF ⇔ PCF | SBI(Npcf) | SMポリシー(PCC rule)・認可QoS・課金方針の取得 |
| N10 | SMF ⇔ UDM | SBI(Nudm) | セッション管理加入データ(許可DNN/S-NSSAI 等)取得・UECM登録 |
| N11相当 | AMF ⇔ SMF | SBI(Namf/Nsmf) | AMFからのSM NAS/セッション要求の受け渡し(Nsmf_PDUSession 等) |
| N40 | SMF ⇔ CHF | SBI(Nchf) | 課金(オンライン/オフライン)連携 ※任意/実装・構成依存 |
N11の扱いについて: AMF⇔SMF間は、3GPPのアーキテクチャ図では参照点として N11 と示されますが、SBA(サービス化)では実体として Namf/Nsmf のSBIサービスでやり取りされます。本サイトではこれを「N11相当(Namf/Nsmf)」と表記します。詳細は Interface辞典 を参照してください。
個別Interfaceページ(N4 / N7 / N40)も参照できます。用語は Interface辞典、PFCP等のプロトコルは Protocol辞典 を参照してください。
Procedure での登場¶
PDU Session Establishment(PDUセッション確立) では、SMFが手続きの主体になります。おおまかには次のように動きます。
- AMFから Nsmf_PDUSession_CreateSMContext でSM NASとセッション要求を受け取る。
- UDM(N10) からセッション管理加入データ(許可DNN/S-NSSAI、既定QoS 等)を取得する。
- (任意/条件付きで)PCF(N7) から SM Policy(PCC rule / 認可QoS)を取得する。
- UEのIPアドレスを割り当て、UPFを選択(UPF selection)する。
- N4(PFCP)でUPFに転送規則(PDR/FAR/QER)を設定する。
- AMF経由でUEへ PDU Session Establishment Accept を返し、gNB側のU-Planeリソース設定を促す。
- gNB側のN3情報が返ってきたら N4 Modification でUPFへ反映し、ユーザプレーンを疎通させる。
これらの詳細なCall Flow・メッセージIE・QoS Flow・N4/N3の2段確立は PDU Session Establishment に集約しています。手順の詳細はそちらを参照してください。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: セッション管理(ベアラ制御)は主に PGW-C / SGW-C が担い、その一部の制御は MME も担っていました。転送は PGW-U / SGW-U が担当し、両者の分離(CUPS)は後付けのオプション(Sxインターフェース)として導入されました。
- 5Gでは: セッション管理の制御機能を SMF に集約し、アクセス/モビリティ管理のAMFとは明確に分離しました。さらに転送は UPF に分離し、その間を N4(PFCP) で結ぶ CUPSを最初から標準アーキテクチャとしています。これにより制御と転送を独立にスケールできます。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| PGW-C / SGW-C(セッション管理・制御部) | SMF |
| MME(セッション管理の一部) | SMF(一部)/ AMF(モビリティ側) |
| PGW-U / SGW-U(転送部) | UPF |
| Sx(PGW-C/U 分離、後付けオプション) | N4(PFCP、標準化) |
CUPSは5Gで標準化された
4Gでも後期にCUPS(PGW-C/PGW-U + Sxインターフェース)が導入されましたが、5Gでは最初から SMF/UPF 分離が標準アーキテクチャであり、その制御インターフェースが N4(PFCP) です。SMFはこの「制御側」を専任するNFとして設計されています。
Release差分¶
- Rel-15: SMFの基本機能(PDUセッション管理、SM NAS終端、UPF選択・N4(PFCP)制御、IPアドレス割当、PCF連携)を規定。
- Rel-16: 機能拡張(例: TSC(時間高精度通信)・Ethernet PDU・I-SMF(Intermediate SMF)導入 等)。具体的な章番号・織り込み範囲は要確認。
- Rel-17: さらなる拡張。具体項目・章番号は要確認。
Release差分は要確認
各Releaseで「SMFの機能」にどの拡張がどこまで織り込まれたかは、対象TSの版差分を個別に確認する必要があります。上記は概観であり、具体項目は要確認です。
3GPP Specification¶
| Spec | 章 | 内容 |
|---|---|---|
| TS 23.501 | §6.2.2 | SMFの機能定義(Network Function の役割) |
| TS 23.502 | §4.3.2.2 | PDU Session Establishment 等の手続きでのSMFの動作(章番号は版により変動、要確認) |
| TS 29.502 | — | Nsmf サービス(PDUSession のAPI)。個別章番号は要確認 |
| TS 29.244 | — | PFCP(N4のセッション制御、PDR/FAR/QER 等)。個別章番号は要確認 |
| TS 32.290 系 | — | 課金アーキテクチャ(Nchf/N40 連携)。SMFの課金関連の扱いは実装/構成依存であり要確認 |
章番号・課金(N40)の扱い
TS 23.501 §6.2.2(SMFの機能定義)は ETSI 公開版(Rel-17)で確定した節番号です。TS 29.502 / TS 29.244 の個別章番号は版により異なる場合があり要確認とします。SMFのオンライン/オフライン課金連携(Nchf/N40)は構成により有無・経路が変わる実装/構成依存の要素です。
Summary¶
- SMFはPDUセッションのライフサイクル(確立・変更・解放)を管理する制御プレーンのNF。
- SM NAS(5GSM)を終端し、UPFを選択して N4(PFCP) で制御する CUPSの制御側(頭脳)。転送はUPF(土管)に委ねる。
- 役割の要は、UPF制御・IPアドレス割当・QoS/課金ポリシー(PCC)適用(PCF連携)。
- 終端Interfaceは N4(UPF)・N7(PCF)・N10(UDM)・N11相当(AMF)。課金(N40/CHF)は任意/実装依存。
- 4GのPGW-C/SGW-C(+MMEの一部)に相当し、転送をUPFへ分離してCUPSを標準化した。
- PDUセッション確立手順でSMFが主役。詳細な手順は PDU Session Establishment を参照。
Next Step¶
- PDU Session Establishment — SMFが主役になる手続き(手順の詳細)
- AMF — SMFへSM NASを中継する相手
- UDM — SMFがセッション管理加入データを取得する相手
- UPF / PCF / CHF — UPFはN4で制御する転送実体、PCFはポリシー、CHFは課金の相手
- NF辞典 / Interface辞典 / Protocol辞典 — 用語の確認