コンテンツにスキップ

NWDAF — Network Data Analytics Function

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 関連NF: AMF/SMF/PCF/NSSF/OAM(データ源・消費者) / 関連Interface: SBI(Nnwdaf)

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • NWDAFが5GCで果たす役割(データの収集・分析・予測(Analytics) の提供)を一言で説明できる。
  • Analytics ID の考え方(分析の種別=負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測等を識別する鍵)を説明できる。
  • 消費者NF(AMF/SMF/PCF等)がNWDAFのAnalyticsをどう利用し、自動最適化・閉ループ制御につなげるかを説明できる。
  • NWDAFが Rel-16で本格化した5G新規機能であり、4G(EPC)には標準的な相当機能が無い点を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

  • SBA(Service Based Architecture)とSBIの基礎 → カリキュラム
  • SBI(Nnwdaf 等のサービスベースInterface)の考え方 → Interface辞典
  • 関連NF(AMF/SMF/PCF/NSSF 等、データ源かつ消費者)の役割 → NF辞典

この章で学べること

まずWhy(NWDAFが無いと何が困るか)から入り、What(データ収集→分析→Analytics提供の流れ、Analytics ID、役割・API)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(Procedureでの登場、EPC比較、参照Spec)へ進みます。

Why — なぜ必要なのか

5GCは多数のNFが連携する大規模で複雑なシステムです。トラフィックの増減、スライスごとの負荷、UEの移動、輻輳や異常の兆候などを、人手で監視して都度最適化するのは限界があります。とくに「これから混みそうだから先回りして資源を割り当てる」といった予測に基づく制御は、勘や事後対応では実現できません。

そこで、ネットワーク各所からデータを収集し、統計・予測(必要に応じて機械学習)で分析・予測(Analytics) を生成し、それを制御を担うNFへ提供する標準機能が必要になります。これがNWDAF(Network Data Analytics Function)です。NWDAFがあることで、負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測といった洞察をNFが受け取り、自動最適化・閉ループ制御(データ→分析→制御→再測定のループ)を回せるようになります。

例え話: NWDAFは、ネットワークの データアナリスト/気象予報士です。各部署(NF/OAM)から日々のデータを集め、「明日はこのエリアが混みます」「この設備に異常の兆候があります」と予報を出します。NWDAFが無いと、各NFは今起きていることにしか反応できず、予測に基づく先回りの制御ができません

Overview — 概要

NWDAF(Network Data Analytics Function)は、5GCにおけるデータ分析・予測の中枢です。動作は大きく3段階です。

  • データ収集 … 各NF(AMF/SMF/PCF/NSSF 等)や OAM(運用管理)から、イベント通知やメトリクスを収集する。
  • 分析(Analytics) … 収集データを統計処理・予測し、必要に応じて機械学習(MLモデル) を用いて洞察を生成する。
  • Analytics提供 … 生成した分析・予測結果を、消費者NF(AMF/SMF/PCF等)へ提供する。

どの種別の分析かは Analytics ID で識別します(例: ネットワーク負荷、スライス負荷、UE挙動/移動、異常検知、QoS維持など。個別のID体系は要確認)。提供の形態は、その都度要求する要求(Request)型と、条件を登録しておいて更新のたびに通知を受ける購読(Subscribe/Notify)型があります。

NWDAFは4G(EPC)には標準的な相当機能が無く、SBA上で標準化された分析機能=5G新規(Rel-16で本格化)という位置づけです。

Basic Concept — 初心者向け説明

NWDAFは、社内の データアナリストだと考えてください。各部署(NF/OAM)から売上や来客数のような「データ」を集め、過去の傾向から未来を予測し、「来週この店舗は混みそうです」「この機械は故障しそうです」と関係部署へ助言します。

  • 集める: 各部署からデータをもらう(データ収集)。
  • 分析する: 過去データから傾向を読み、未来を予測する(Analytics、必要ならMLモデルを使う)。
  • 助言する: 予測結果を、実際に動く部署(消費者NF)へ渡す(Analytics提供)。

助言の「種類」を表すラベルが Analytics ID です。「負荷予測」「異常検知」「スライスの混み具合」など、どの分析かをこのIDで指定します。受け取り方は、その都度たずねる(Request)ことも、先に登録して更新があれば知らせてもらう(Subscribe/Notify)こともできます。

Network Function 詳細

項目 内容
役割 ネットワークデータの収集・分析・予測(Analytics) を行い、Analytics IDごとの洞察を消費者NF(AMF/SMF/PCF等)へ提供。自動最適化・閉ループ制御を支える
保持情報 収集データ、学習モデル(MLモデル)、Analytics結果、サブスクリプション(購読)情報
利用する主なAPI(他NFへ呼ぶ) 各NFの Event Exposure(Namf_EventExposure, Nsmf_EventExposure 等)でのデータ収集、NRFでのNF Discovery(Nnrf)、OAMからのデータ取得(OAMインターフェースは実装/構成依存)
提供するAPI(自分が公開) Nnwdaf_AnalyticsInfo(Request=要求型でのAnalytics取得)、Nnwdaf_EventsSubscription(Subscribe/Notify=購読・通知型)、Rel-17で MLModelProvision 等(TS 29.520)。個別のサービス範囲は要確認
関連Interface SBI(Nnwdaf
障害時の影響 分析ベースの最適化・予測制御が停止する。ただし各NFの基本通信(登録・セッション等)は既定動作で継続でき、影響は最適化機能に限定される(構成依存)

Architecture

NWDAFは各NF/OAMからデータを収集し、分析・予測結果を消費者NF(PCF/AMF/SMF等)へ提供する、データ分析のハブとして機能します。

flowchart LR
  AMF["AMF"]
  SMF["SMF"]
  PCF["PCF"]
  NSSF["NSSF"]
  OAM["OAM (運用管理)"]
  NWDAF["NWDAF (分析・予測)"]

  AMF -- "データ収集 (Event Exposure)" --> NWDAF
  SMF -- "データ収集 (Event Exposure)" --> NWDAF
  NSSF -- "スライス関連データ" --> NWDAF
  OAM -- "メトリクス収集" --> NWDAF
  NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> PCF
  NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> AMF
  NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> SMF

図の読み方: NWDAFは AMF/SMF/NSSF などのNFや OAM から Event Exposure やメトリクスとしてデータを収集し(左向きの流入)、分析・予測した結果を Analytics ID 単位で消費者NF(PCF/AMF/SMF 等)へ Nnwdaf で提供します(右向きの流出)。同じNFがデータ源にも消費者にもなり得る点が特徴で、これにより「測定→分析→制御→再測定」の閉ループが成立します。

Interface

NWDAFが持つ主なInterfaceと役割です。

Interface 両端 役割
SBI(Nnwdaf) NF ⇔ NWDAF 各NF/OAMからのデータ収集、および分析・予測結果(Analytics)の提供

SBI(HTTP/2 + JSON over TLS)およびNnwdaf の詳細は Interface辞典 を参照してください。

Procedure での登場

NWDAFは、登録やPDU Session確立といった基本手続きそのものの内部ではなく、その外側の最適化・運用の文脈で登場します。基本手続きは NWDAF が無くても成立し、NWDAF の Analytics は制御をより賢くするために使われます。

  • PCF が NWDAF のスライス負荷分析を参照し、ポリシー(QoS/課金/経路選択)を負荷状況に応じて調整する。
  • AMF が UE の移動予測(UE挙動 Analytics) を利用し、モビリティ管理やページング戦略を先回りで最適化する。
  • SMF が負荷予測を参照し、セッション/資源配分を調整する。

これらは応用シナリオであり、具体的な連携タイミング・IE・Analytics IDの詳細は要確認です。ポリシー面は PCF を、Analyticsの外部(サードパーティ)公開の観点は NEF を参照してください。

EPCとの比較

  • 4Gでは: 標準的な相当機能が存在しません。 ネットワークの分析・最適化は OAM や事業者/ベンダー独自の分析基盤(監視・KPI集計・手動チューニング等)に依存していました。標準NFとしての「分析機能」は定義されていません。
  • 5Gでは: NWDAF がSBA上で標準化された分析機能として定義され、各NFがSBI(Nnwdaf)で分析・予測を利用できます。データ駆動の自動最適化・閉ループ制御を、標準の枠組みで実現できるようになりました。
4G (EPC) 5G (5GC)
(標準相当なし。OAM/独自分析基盤に依存) NWDAF(Nnwdaf)

Release差分

  • Rel-15: NWDAFの概念導入(分析機能という枠組みの提示)。
  • Rel-16: NWDAFの本格定義。複数の Analytics ID(ネットワーク負荷、スライス負荷、UE挙動、異常検知 等)とデータ収集・提供の枠組みを規定。
  • Rel-17: MLモデル提供(MLModelProvision 等)、分析精度の向上、分散NWDAF(データ収集と分析の分離・集約と推論の分離)等の拡張。具体項目・章番号は要確認

3GPP Specification

  • 3GPP TS 23.501 §6.2.18 — NWDAF の機能定義(Network Function としての役割)
  • 3GPP TS 23.288 — Analytics の詳細(Analytics ID、データ収集・分析の手続き)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 29.520 — Nnwdaf サービス(AnalyticsInfo、EventsSubscription 等)。個別章番号は要確認

注記(要確認): 上記の対応は一般的な整理ですが、Analytics ID の具体的な体系や各サービスの細目・章番号は Release により差異があるため、個別には要確認とします。SBIは HTTP/2 + JSON over TLS で実装されます。

Summary

  • NWDAFは5GCのデータ分析・予測(Analytics)の中枢で、各NF/OAMからデータを収集し、消費者NFへ分析・予測結果を提供する。
  • どの分析かは Analytics ID で識別する(負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測 等)。提供は要求(Request)型購読(Subscribe/Notify)型がある。
  • 消費者NF(AMF/SMF/PCF等)がAnalyticsを利用し、自動最適化・閉ループ制御(測定→分析→制御→再測定)を回せる。
  • 提供APIは Nnwdaf_AnalyticsInfo / Nnwdaf_EventsSubscription、Rel-17で MLModelProvision 等(TS 29.520)。
  • NWDAFは Rel-16で本格化した5G新規機能で、4G(EPC)には標準的な相当機能が無い(OAM/独自分析基盤に依存)。

Next Step

  • PCF — NWDAFのスライス負荷分析等を参照してポリシーを調整する消費者NF
  • NEF — Analyticsを外部(サードパーティ)へ公開する際の窓口
  • NF辞典 — AMF/SMF/NSSF 等、データ源かつ消費者となるNFの確認
  • Interface辞典 — SBI(Nnwdaf)の確認