Xn — gNB ⇔ gNB(RAN基地局間インターフェース)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- Xnが 基地局(gNB)同士を直接結ぶRANノード間インターフェース であり、5GCの参照点(N2/N3等)とは位置づけが違うことを説明できる。
- Xnが 制御面 Xn-C(XnAP over SCTP) と ユーザ面 Xn-U(GTP-U) の2面から成ることを説明できる。
- Xnの主用途が Xn-based Handover(gNB間の直接ハンドオーバ)と、そのための UEコンテキスト移送・データ転送(data forwarding) であることを説明できる。
- Xn HO 完了後にコアと接続する Path Switch(N2/NGAP) の役割を、Xnとの分担で説明できる。
- 4G(EPC)の X2(eNB⇔eNB, X2AP) との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- Xnが主役として働く手続きの全体像 → Handover(ハンドオーバ)
- XnAPの下位 SCTP・ユーザ面 GTP-U の位置づけ → Protocol辞典
- コアとの接続点(Path Switch を運ぶ制御路) → N2
- gNB間のユーザデータ経路(N3と対比) → N3
- Interface / 参照点の考え方 → Interface辞典
Why — なぜ必要なのか¶
UEは移動します。ある基地局(Source gNB)のエリアから隣の基地局(Target gNB)のエリアへ移るとき、通信を 途切れさせずに引き継ぐ(ハンドオーバ)必要があります。
このとき、もし基地局同士が直接連絡できなければ、引き継ぎの調整をすべて コア(AMF)経由 で行うことになり、手順が重くなります。隣り合う基地局同士が「このUEをそちらへ渡します。コンテキストはこれです。残りの下りデータは一時的にそちらへ転送します」と 直接やり取りできる道 があれば、引き継ぎは速く滑らかになります。
この gNB同士を直接結ぶ道 が Xn です。Xnがあれば、基地局同士が直接ハンドオーバを調整でき(Xn-based Handover)、コアは実行後の後追い手続き(Path Switch)だけで済みます。Xnが無ければ、ハンドオーバはコア仲介の N2-based Handover で行う必要があります。3GPP TS 38.420 / TS 38.423 等に規定されます(詳細な章番号は 要確認)。
例え話: Xnは、隣接する2つの支店(gNB)を結ぶ支店間ホットラインです。お客さん(UE)が隣の支店へ移るとき、本社(AMF)にいちいち取り次いでもらわず、支店同士が直接「この方をそちらへ。記録はこれです」と引き継げます。
Overview — 概要¶
Xnは gNB ⇔ gNB、つまり RANノード同士 を結ぶインターフェースです。5GCの多くの参照点(N2/N3/N4 …)が RAN⇔コア や コア内NF間 を結ぶのに対し、Xnは 基地局と基地局 を結ぶ点が特徴です。このためXnは、いわゆる 5GC の参照点(Nx番号)とは別枠の RANインターフェース として位置づけられます。
Xnは、役割の異なる2つの面から成ります。
| 面 | 名称 | Protocol | 役割 |
|---|---|---|---|
| 制御面 | Xn-C | XnAP over SCTP | Xn-based Handover の調整、UEコンテキスト移送、gNB間の設定連携 |
| ユーザ面 | Xn-U | GTP-U over UDP | ハンドオーバ中の data forwarding(下りデータの一時転送)等 |
Xnの主用途は Xn-based Handover です。Source gNB と Target gNB が Xn-C(XnAP) 上で直接ハンドオーバを調整し、UEコンテキストを引き継ぎ、必要に応じて Xn-U(GTP-U) で在庫の下りデータを Target gNB へ転送します。ハンドオーバが無線区間で完了した後、Target gNB は コア(AMF)へ N2/NGAP の Path Switch を送り、UPFからの下りパス(N3)を新gNBへ張り替えます。
Xnは『参照点(Nx)』ではなくRANインターフェース
N2(gNB⇔AMF)や N3(gNB⇔UPF)は RANとコア を結ぶ 5GC の参照点ですが、Xnは gNB同士 を結ぶ RANノード間インターフェースです。したがって Xn には「Nいくつ」という参照点番号は割り当てられていません。役割・所管仕様(TS 38 系=NG-RAN)も、コア側参照点(TS 23/29 系)とは系統が異なります。この違いが、Xnを Interface辞典 で別枠として扱う理由です。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
Xnを 隣り合う2つの支店(gNB)を結ぶ直通ホットライン に例えます。
- お客さん(UE)が支店Aから支店Bへ移動しそうになると、支店Aは本社(AMF)を介さず、直通ホットライン(Xn-C) で支店Bに「この方をそちらへ引き継ぎます。これまでの記録(UEコンテキスト)はこれです」と直接連絡します。
- 引き継ぎ中、支店A宛てにまだ届いていた荷物(下りデータ)は、荷物用の直通便(Xn-U) で支店Bへ一時的に転送し、取りこぼしを防ぎます。
- お客さんが支店Bのカウンター(無線)に移り終えたら、支店Bが 本社(AMF)へ「今後はこの方は当店です」と届け出ます(Path Switch)。すると本社は荷物の配送先(下りデータのN3経路)を支店Bへ切り替えます。
つまり Xn は 支店同士の直接連絡(制御 Xn-C + 荷物転送 Xn-U) を担い、最後の 本社への届け出だけは別の回線(N2/NGAP の Path Switch) で行う、という分担です。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 制御面Protocol | XnAP(Xn Application Protocol) — TS 38.423 |
| 制御面Transport | SCTP over IP(信頼性・順序保証・マルチストリーム/マルチホーミング) |
| ユーザ面Protocol | GTP-U — TS 29.281(ハンドオーバ中の data forwarding 等) |
| ユーザ面Transport | UDP over IP(GTP-U は UDP 2152) |
| 所管仕様 | TS 38.420(Xn一般原則)/ TS 38.423(XnAP)/ TS 38.424(Xn-U)系(章番号は 要確認) |
| 特徴 | RANノード間の直接IF。制御(Xn-C)とユーザ(Xn-U)の2面。HO調整・UEコンテキスト移送・data forwarding |
制御はSCTP・ユーザはGTP-U(4GのX2と同じ設計思想)
Xnの制御面(Xn-C/XnAP)は、N2(NGAP)や4GのS1AP/X2APと同じく SCTP 上で運ばれます(制御シグナリングは損失・順序狂いに弱いため)。一方ユーザ面(Xn-U)は、ハンドオーバ中の下りデータ転送を担うため GTP-U(UDP 2152) を用います。GTP-U=UDP 2152 は断定できますが、Xn固有のポート割当やprocedureCode等の細目は 要確認 とします。
Architecture¶
flowchart LR
UE(("UE"))
sgNB["Source gNB"]
tgNB["Target gNB"]
AMF["AMF (5GC)"]
UPF["UPF (5GC)"]
UE -- "無線(移動)" --> tgNB
sgNB == "Xn-C (XnAP / SCTP): HO調整・コンテキスト移送" ==> tgNB
sgNB -. "Xn-U (GTP-U): data forwarding" .-> tgNB
tgNB -- "N2 (NGAP): Path Switch" --> AMF
UPF -- "N3 (GTP-U): 下りパス(切替対象)" --> tgNB
classDef ran fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
class sgNB,tgNB ran;
図の読み方: 太い線(==>)が Xn-C(XnAP/SCTP) で、Source gNB と Target gNB が ハンドオーバを直接調整 し UEコンテキストを移送します。点線が Xn-U(GTP-U) で、引き継ぎ中の 下りデータを一時転送(data forwarding) します。ハンドオーバが無線で完了すると、Target gNB が N2(NGAP) の Path Switch で AMF へ届け出て、UPFからの N3 下りパス を新gNBへ張り替えます。Xnは gNB同士、Path Switch と N3 は コアとの接続 という分担に注目してください。手続きの詳細な流れは Handover章 に集約しています(本ページでは再掲しません)。
利用Procedure¶
Xnは主に Xn-based Handover で使われます。
- Xn Setup: 隣接 gNB 間で Xn を確立する握手(能力・セル情報等の交換)。UEに紐づかない基盤手続き。
- Handover Preparation(Xn-C): Source gNB が Target gNB へ Handover Request を送り、Target が受入可否と必要情報を Handover Request Acknowledge で返す。ここで UEコンテキスト が移送される。
- Data forwarding(Xn-U): 引き継ぎ中、Source gNB に残る下りデータを Target gNB へ GTP-U で一時転送 し、取りこぼしを防ぐ。
- Path Switch(Xn完了後・N2/NGAP): Target gNB が AMFへ Path Switch Request を送り、UPFの下りパス(N3)を新gNBへ切り替える。これは Xnではなく N2 の手続き。
Xn-based と N2-based の適用条件の違い、Path Switch の位置づけ、State Machine 等の詳細は Handover章 を参照してください(手続きの細部・procedureCode・章番号枝番は要確認)。
主なMessage¶
Xn-C(XnAP)を流れる代表的なメッセージです(例示・要確認)。
| メッセージ(例) | 面 | 用途 |
|---|---|---|
| Xn Setup Request / Response | Xn-C | Xn確立の握手(gNB間の能力・セル情報交換) |
| Handover Request / Request Acknowledge | Xn-C | Xn-based HO の準備・UEコンテキスト移送 |
| SN Status Transfer(要確認) | Xn-C | 引き継ぎ時のシーケンス番号等の状態移送 |
| UE Context Release(要確認) | Xn-C | HO完了後の Source 側UEコンテキスト解放 |
メッセージ名・procedureCodeは要確認: 上表のXnAPメッセージ名・割当はReleaseにより差異があります。正確な定義は TS 38.423 の当該Releaseを参照してください。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
Xnは、制御面が XnAP over SCTP、ユーザ面が GTP-U として観測されます。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| XnAP(制御面)を抽出 | xnap |
| 下位SCTPを見る | sctp |
| Xn-U(ユーザ面 GTP-U)を見る | gtp |
Decodeの見どころ:
- 制御面は XnAP で、procedureCode により Xn Setup / Handover Preparation 等を識別します(下位は SCTP)。
- ユーザ面 Xn-U は GTP-U(UDP 2152) で、ハンドオーバ中の data forwarding のトンネルが観測できます。
- Xnは gNB同士 のインターフェースです。コアとの Path Switch は N2(NGAP) 側 に現れるため、
ngap(N2)と混同しないよう切り分けます。 - SBI(HTTP/2)やPFCP(N4)は Xn には無関係で、
http2/pfcpフィルタは使いません。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: 隣接する基地局(eNB)同士を直接結ぶ X2 インターフェースがあり、制御面 X2AP(TS 36.423)over SCTP と ユーザ面 X2-U(GTP-U) で、X2-based Handover の直接調整と data forwarding を行いました。X2が無い/コア再配置が要る場合は S1-based Handover(MME仲介)でした。
- 5Gでは: これに対応するのが Xn(制御面 XnAP / TS 38.423、ユーザ面 Xn-U / GTP-U)で、Xn-based Handover を直接調整します。Xnが無い/AMF・UPF再配置が要る場合は N2-based Handover(AMF仲介)になります。
| 4G (EPC) | 5G (5GC / NG-RAN) |
|---|---|
| X2(eNB ⇔ eNB) | Xn(gNB ⇔ gNB) |
| X2AP(TS 36.423) | XnAP(TS 38.423) |
| X2-U(GTP-U) | Xn-U(GTP-U) |
| X2-based / S1-based Handover | Xn-based / N2-based Handover |
| Path Switch(X2 HO後, eNB→MME) | Path Switch(Xn HO後, gNB→AMF, NGAP) |
4Gの X2(eNB間) が、5Gで Xn(gNB間) に対応します。Path Switch という「HO後にコアへ届け出て下りパスを切り替える」考え方は4G(X2 HO)からそのまま受け継がれています(Handover章 参照)。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 38.420 — Xn一般原則(NG-RAN ノード間インターフェース)。個別章番号は 要確認
- 3GPP TS 38.423 — XnAP(Xn Application Protocol)。制御面(Xn-C)。個別章番号は 要確認
- 3GPP TS 38.424 — Xn データ転送(Xn-U)関連。個別章番号は 要確認
- 3GPP TS 29.281 — GTP-U(Xn-U のユーザ面カプセル化。UDP 2152)
- 3GPP TS 38.300 — NG-RAN 全体アーキテクチャ(Xn の位置づけ)
- IETF RFC 4960 — SCTP(XnAP の下位Transport)
この辞典的ページの断定範囲
断定するのは Xn が gNB間IFであること・Xn-C(XnAP/SCTP)とXn-U(GTP-U)の二面構成・主用途がXn-based Handover であること・GTP-U=UDP 2152・X2 との対応 までです。XnAPの個別メッセージ名/procedureCode・章番号枝番・Xn固有のポート割当 は Release 差があり、捏造せず 要確認 とします。
Summary¶
- Xnは gNB ⇔ gNB を結ぶ RANノード間インターフェース で、5GCの参照点(Nx番号)とは別枠。
- Xn-C(XnAP over SCTP) と Xn-U(GTP-U over UDP 2152) の2面から成る。
- 主用途は Xn-based Handover:gNB同士が Xn-C で直接調整し UEコンテキストを移送、Xn-U で data forwarding を行う。
- HO完了後の Path Switch は Xnではなく N2(NGAP) の手続きで、UPFの下りパス(N3)を新gNBへ切り替える。
- 4Gの X2(eNB間, X2AP TS 36.423, X2-U) に相当。Path Switch の考え方は4Gから継続(詳細は Handover章)。
Next Step¶
- Handover(ハンドオーバ) — Xnが主役として働く手続きの全体像(Xn-based / N2-based)
- N2 — HO完了後の Path Switch を運ぶコア側制御路
- N3 — Path Switch で切り替わる下りユーザプレーン経路
- N14 — AMF間UEコンテキスト移送(N2-based HOでAMFが変わる場合に連携)
- Interface辞典 — 参照点・RANインターフェースの一覧