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N6 — UPF ⇔ DN(データネットワーク 参照点)

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 接続点: UPF ⇔ DN(Data Network) / Protocol: IPベース(3GPPは固有トンネル非規定) / 関連Interface: N3, N9

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • N6が UPF ⇔ DN(Data Network) を結ぶ、5Gコアの外部への出口であることを説明できる。
  • 接続先のDNが DNN(Data Network Name) で識別されることを説明できる。
  • UPFが PSA(PDU Session Anchor) としてN6でDNへ抜ける役割を説明できる。
  • 3GPPがN6上の固有トンネルProtocolを規定せず、IP接続で実装・配置依存となる点を、N3(GTP-U)との違いとして説明できる。
  • 4G(EPC)の SGi(PGW⇔外部PDN)との対応関係を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

Why — なぜ必要なのか

5Gコアが登録・認証・セッション確立を終え、UPFがユーザデータを転送できる状態になっても、そのデータを最終的に届ける「外の世界」への出口がなければ通信は完結しません。ユーザが見たいWebページ、動画配信サーバ、IMSによる通話、社内システムといった宛先は、いずれも5Gコアの外側にあるネットワーク(=DN, Data Network)にあります。

この「5Gコア(UPF)と外部網(DN)をつなぐ出口」がN6です。N6が無ければ、コア内部でどれだけデータを運べても、インターネットや事業者サービスへ抜けられず、UEは「圏内なのにどこにもつながらない」状態になります。N6は、コアが処理したパケットを外の世界へ送り出し、外からの応答を受け取る、最終的な玄関口です。

Overview — 概要

N6は UPF ⇔ DN(Data Network) を結ぶ参照点です。DNとは、インターネット、IMS(通話網)、事業者独自のサービス網、あるいは企業の社内網など、5Gコアの外側にある宛先ネットワークの総称です。どのDNへ抜けるかは DNN(Data Network Name、接続先ネットワークの名前) で識別されます(4GのAPNに相当)。

N6の最大の特徴は、3GPPが参照点としてN6を定義する一方で、N6上を流れる具体的なプロトコルを固有には規定しないことです。N3(gNB⇔UPF)ではGTP-Uというトンネルプロトコルが規定されますが、N6にはそのような3GPP固有のトンネルはありません。N6以降は「ごく普通のIP接続」であり、その具体(ルーティング、NAT、ファイアウォール、課金・ポリシー適用など)はネットワーク構成・実装・配置に依存します。

このN6でDNへ抜ける出口となるUPFが、PSA(PDU Session Anchor、セッション中UEのIPを保持する固定の出口点)です。

Basic Concept — 初心者向け説明

N6を建物の正面玄関に例えます。

  • 建物の中(5Gコア)で荷物(パケット)が仕分け・搬送された最後に、正面玄関(N6)を通って街(DN=インターネット等)へ出ていきます。玄関を出た先はもう建物の外=一般の街並みです。
  • 荷物には「どの街のどの区域へ行くか」を示す行き先ラベル(DNN)が付いていて、玄関番(UPF=PSA)はそのラベルを見て正しい方角の外部網へ送り出します。
  • UEが移動(ハンドオーバ)しても、この街への玄関(PSA)は同じものを使い続けます。玄関を変えない=出口が固定されるからこそ、UEのIPアドレスが変わらず通信が途切れません。PSAの「Anchor(係留=一箇所に留める)」とはこの意味です。
  • 帰りの荷物(DN→UE)も、この同じ玄関を通って建物内に入り、UEまで届けられます。

ここで大事なのは、N3(建物内のトンネル便=GTP-U)とN6(玄関の外=普通のIP通信)の違いです。建物の中では専用の搬送トンネル(GTP-U)で運ばれていた荷物も、玄関(N6)を出た瞬間からは特別なトンネルの無い、ごく普通のIP通信になります。玄関の外で荷物をどう捌くか(検問=ファイアウォール、住所付け替え=NAT、通行料の記録=課金など)は、その建物の運営方針(実装・構成)次第であり、3GPPが「必ずこうせよ」とは決めていません。

Protocol / Transport

項目 内容
Protocol IPベース(3GPPは固有トンネルProtocolを非規定) — N3のGTP-Uのようなトンネルは無い
下位Transport IP(IPv4 / IPv6)。上位でTCP/UDP等、DN側のアプリケーションに依存
ポート N6固有のポートは無し。DN側で用いられるサービス/プロトコルに依存
識別 接続先DNは DNN(Data Network Name) で識別される
出口の実体 UPFが PSA(PDU Session Anchor) としてN6でDNへ抜ける
付随機能 NAT / ファイアウォール / 課金・ポリシー適用点になりうる(いずれも実装・配置依存

N3(GTP-U)とN6の決定的な違い

N3ではユーザデータを GTP-U というトンネルで運び、TEIDでトンネルを識別します。一方 N6には3GPPが規定する固有トンネルがありません。N6はDNとの一般的なIP接続であり、具体的な接続方式(トンネルを使うか否かを含む)はネットワーク設計・実装・配置に依存します。ここで架空のプロトコルやポートを想定しないことが、N6を正しく理解する鍵です。

Architecture

N6が、N3(GTP-U)で運ばれてきたユーザデータをUPF(PSA)で受け、DNへ抜ける様子を示します。

flowchart LR
  gNB["gNB (基地局)"]
  UPF["UPF (PSA)"]
  DN(("Data Network / Internet"))

  gNB == "N3 (GTP-U トンネル)" ==> UPF
  UPF -- "N6 (一般的なIP接続)" --> DN

  classDef anchor fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
  classDef ext fill:#eef,stroke:#66f,stroke-width:2px;
  class UPF anchor;
  class DN ext;

図の読み方: gNBからUPFまでは太線の N3(GTP-U)トンネルでユーザデータが運ばれます。UPF(PSA)でトンネルが終端され、そこから先の N6は普通のIP接続(細線)としてDNへ抜けます。N6以降は3GPP固有のトンネルを持たない一般IPである点、そして出口のUPFが PSA として機能する点に注目してください。NAT/ファイアウォール等をどこで適用するかは実装・配置依存です。

なお、UPFが複数段ある構成では、PSAより手前のUPFとの間は N9(GTP-U) で結ばれます。N9も3GPP固有トンネル(GTP-U)を使う点で、トンネルを持たないN6とは対照的です(トンネルはPSAで終端され、その先のN6が素のIPになる)。

利用Procedure

N6は制御シグナリングを持つインターフェースではなく、PDU Sessionが確立された結果として、ユーザデータがDNへ到達できるようになる出口です。

  • UPF(PSA)の選択: PDU Session Establishmentで、SMFが接続先(DNN等)に応じて PSAとなるUPFを選択します。このUPFがN6でDNへ抜ける出口になります。
  • IPアドレス割当との関係: UEに割り当てられるIPアドレスは SMFが管理・割当し、そのUEのパケットはPSAであるUPFを経由してN6からDNへ到達します。UEはこのIPを使ってDN上の宛先と通信します。
  • 上り/下りの流れ: 上り(UE→DN)はN3(GTP-U)でUPFへ入り、UPFでトンネル終端後N6でDNへ。下り(DN→UE)はN6でUPFに入り、UPFがN3(GTP-U)でgNBへ返します。

PSA選択・IPアドレス割当・N4ルール設定を含むPDU Session確立の詳しいCall Flowは、重複を避けるため PDU Session Establishment を参照してください。本ページでは手順の詳細は繰り返しません。

主なMessage

メッセージ 種別 備考
(3GPP規定の固有シグナリング無し) N6には、N2のNGAPやN4のPFCPのような3GPP固有の制御メッセージが規定されていません

N6にはN6固有の3GPPシグナリングが無い

N6は一般的なIP接続の参照点であり、N6専用の3GPPメッセージセットは規定されていません。DN接続の実現にあたって DHCP / RADIUS / Diameter 等が使われることはありえますが、それらを使うか否か・どう使うかはネットワーク構成・実装・配置に依存します。本ページでは「これらが必ず使われる」とは断定しません。DN側で用いられるプロトコルはDNの設計次第です。

Packet Analysis (Wireshark)

N6は3GPP固有のトンネルを持たないため、キャプチャ上はごく一般的なIPトラフィックとして観測されます。N2のngapやN3のGTP-UのようなN6固有のディスプレイフィルタは存在しません

目的 Display Filter
IPトラフィックを見る ip(IPv4) / ipv6
上位のトランスポートを見る tcp / udp
特定ホスト/ポートで絞る ip.addr == <アドレス> / tcp.port == <番号> など汎用フィルタ

Decodeの見どころ:

  • N6区間では GTP-UのTEIDのようなトンネル識別子は現れません。UPF(PSA)でトンネルが終端された後の、素のIPパケットが流れます。N3側のキャプチャ(GTP-Uに包まれた状態)と見比べると、UPFでトンネルが剥がれる境界が理解できます。
  • DN側でDHCP/RADIUS/Diameter等が使われている構成なら、それらのプロトコルが観測されることもありますが、これは構成依存であり、N6固有の必須要素ではありません。
  • DPI(Deep Packet Inspection、深いパケット検査)やアプリ識別を行うか否か・その範囲は実装依存です。N6固有のフィルタが無い以上、観測されるプロトコルはDN側の構成がそのまま反映されます。

EPCとの比較

  • 4Gでは: ユーザプレーンの外部網への出口は SGi でした。PGW(P-GW)が SGi を介して外部PDN(Packet Data Network、インターネットや事業者網)へ抜けます。接続先は APN(Access Point Name) で識別されました。
  • 5Gでは: 出口は N6 となり、UPF(PSA)N6 を介して DN へ抜けます。接続先は DNN(Data Network Name) で識別されます(+S-NSSAIでスライス指定)。
4G (EPC) 5G (5GC)
SGi N6
PGW(外部PDNへの出口) UPF(PSA, DNへの出口)
外部PDN DN(Data Network)
APN(接続先指定) DNN(+S-NSSAI でスライス指定)
IP接続(固有トンネル非規定) IP接続(固有トンネル非規定)

SGiもN6も「外部網への出口」で共通の性質

SGi(4G)とN6(5G)は、どちらもコアから外部網への出口であり、IP接続で、3GPP固有のトンネルを規定しないという共通の性質を持ちます。名称と出口NF(PGW→UPF(PSA))、接続先識別子(APN→DNN)が変わった一方で、「外への出口は一般IP接続」という基本設計は引き継がれています。

3GPP Specification

  • 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N6の定義:UPF⇔DN)
  • 3GPP TS 23.501 §5.6 系 — PDU Session・DN・DNN 関連(DNNによるDN識別など)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 23.502 — 手続き(PDU Session Establishment 等、PSA選択・IP割当を含む)。個別章番号は要確認

N6固有のプロトコル仕様は存在しない

N2のTS 38.413(NGAP)、N4のTS 29.244(PFCP)、N3/N9のTS 29.281(GTP-U)のような、N6専用のプロトコル仕様書は3GPPに存在しません。これはN6が「参照点としては定義されるが、その上の具体的接続はIP接続で実装・配置依存」という性質だからです。各章番号は版により異なる場合があり、一部は要確認とします。

Summary

  • N6は UPF ⇔ DN(Data Network) を結ぶ参照点で、5Gコアの外部(インターネット等)への出口
  • 接続先DNは DNN(Data Network Name) で識別され、出口となるUPFが PSA(PDU Session Anchor) として機能する。
  • 3GPPはN6を参照点として定義するが、N6上の固有トンネルProtocolは規定しない。N6は一般的なIP接続で、具体は実装・配置依存
  • N3(GTP-U)と異なり、N6には3GPP固有のトンネルも固有シグナリングも無い。NAT/FW/課金・ポリシー適用点になりうるが実装依存
  • 4Gの SGi(PGW⇔外部PDN, APN識別)に相当し、5GではN6(UPF(PSA)⇔DN, DNN識別)に。IP接続・固有トンネル非規定という性質は共通。

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