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UPF — User Plane Function

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 関連NF: SMF, gNB, PCF / 関連Interface: N3, N4, N6, N9

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • UPFが5GCで果たす役割(ユーザプレーンの転送実体)を一言で説明できる。
  • UPFがSMFからN4(PFCP)で受けるルール(PDR/FAR/QER/URR)が何をするものかを説明できる。
  • UPFが終端するInterface(N3/N4/N6/N9)とその相手・用途を図示できる。
  • CUPS(制御SMFと転送UPFの分離)における「転送側」としてのUPFの位置づけを説明できる。
  • 4G(EPC)のSGW-U/PGW-Uとの対応関係(GTP-U共通、PFCP制御でCUPS標準化)を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

この章で学べること

Why(UPFが無いと何が困るか)から入り、What(UPFの役割・N4ルール・API)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(PDUセッションでの登場、EPC比較、参照Spec)へ進みます。

本章はUPFというNFそのもの(役割・データプレーン処理・N4ルールの適用)に焦点を絞ります。UPFが登場する手続きの詳細(PDU Session Establishment のCall Flowや、N4のEstablishment→Modificationの2段構え)は PDU Session Establishment で扱います(本ページ後半の「Procedure での登場」から誘導)。

Why — なぜUPFが必要なのか

5GCの制御シグナリング(登録・認証・セッション管理)が全て済んでも、実際のユーザデータ(Webページ、動画、通話の中身)を運ぶ担当がいなければ、通信は成立しません。制御プレーンのNF(AMF/SMF/AUSF/UDM)は「段取り」を決めるだけで、パケットそのものは扱いません。このユーザデータのパケットを実際に転送する専任の担当がUPFです。

なぜ転送を専任のNFに分けるのでしょうか。これが CUPS(Control and User Plane Separation、制御プレーンとユーザプレーンの分離) の考え方です。制御(頭脳=SMF)と転送(土管=UPF)を分けると、次の利点があります。

  • 独立してスケールできる: 大量のトラフィックが流れても、転送側(UPF)だけを増強すればよい。制御側(SMF)は増やさなくてよい。
  • エッジ配置で低遅延にできる: UPFをユーザに近い場所(基地局の近く=エッジ)に置けば、データがコア中央まで往復せず短い経路で抜けられる。どこにUPFを置くか(エッジか中央か)は実装/構成依存です。

例え話: UPFは郵便の仕分け・配送センターです。制御側(SMF)が「この荷物はこの宛先へ、この優先度で運べ」という配送指示書(N4ルール)を出し、配送センター(UPF)はその指示書どおりに荷物(パケット)を仕分け・転送します。配送センターは自分で宛先を決めず、指示書に従って淡々と大量の荷物を捌く実働部隊です。指示を出す本部(SMF)と、実際に荷物を運ぶセンター(UPF)を分けることで、荷物が増えたらセンターだけ増設でき、また利用者に近い場所にセンターを置けば配送が速くなります。

Overview — 概要

UPF(User Plane Function)は、5GCのユーザプレーン(データ転送)の実体です。SMFから N4(PFCP)(PFCP=N4上でSMFがUPFを制御するプロトコル)で受け取ったルールに従って、ユーザデータのパケットを検出・転送・QoS適用・使用量計測します。無線側(gNB)とは N3(GTP-U)(GTP-U=ユーザデータを運ぶトンネルプロトコル)で、データネットワーク側(DN: Data Network、インターネット等の外部網)とは N6 で、他のUPFとは N9(GTP-U) で接続します。

UPFは自分で判断せず、SMFの指示(N4ルール)に従って動く転送専任NFです。SBI(Service Based Interface)でサービスを公開する制御プレーンNFとは異なり、UPFはSBIを持たず、N4という専用インターフェースでSMFに制御されます。

Basic Concept — 初心者向け説明

UPFがやっていることは、突き詰めると「入ってきたパケットを見て、ルールに従って外に出す」だけです。この「ルール」がSMFからN4で渡される4種類の指示で、それぞれ役割が分かれています。荷物の配送に例えると分かりやすくなります。

ルール 正式名 何をするか 配送センターの例え
PDR Packet Detection Rule 入ってきたパケットが「どのルールに該当するか」を見分ける 荷物の宛名ラベルを見て「これはどの処理ラインの荷物か」を仕分ける
FAR Forwarding Action Rule 見分けたパケットをどう扱うか(転送/破棄/バッファ、どこへ出すか)を決める 「この荷物はこのトラックで、この宛先へ運ぶ/保留する/破棄する」
QER QoS Enforcement Rule パケットにQoS(品質・帯域制限・優先度)を適用する 「この荷物は最優先便、こちらは通常便。1日あたりの量は上限まで」
URR Usage Reporting Rule パケットの使用量を計測し、SMFへ報告(課金や上限管理の材料) 「この宛先向けに何個運んだかをカウントし、本部へ報告する」

(根拠: PDR/FAR/QER/URR は TS 29.244(PFCP)で規定されるルール。各ルールのIE・詳細な適用順序は要確認。)

流れを一言でまとめると、UPFはおおむね 「パケットを見分ける(PDR)→ 品質を適用する(QER)→ 使用量を計測する(URR)→ 転送先へ送る(FAR)」 という処理を全パケットに対して高速に繰り返します。これがユーザプレーンの「土管」の中身です。ただし各ルールの厳密な適用順序はspecを要確認(TS 29.244)とし、ここでは概念的な流れとして示します。

Network Function 詳細

UPFの主な機能を整理します。

機能 内容
GTP-U終端(N3/N9) 無線側(gNB)との N3、UPF間の N9 で GTP-U トンネルを終端。TEID(トンネル識別子)でトンネルを識別する
N4ルール適用 SMFから N4(PFCP) で受けた PDR/FAR/QER/URR を適用し、パケットを検出・転送・QoS適用・計測する
パケットのルーティング/転送 ルール(FAR)に従いパケットを転送・破棄・バッファリング。上り(DN方向)・下り(UE方向)双方の転送を担う
QoS適用 QER に基づき、QoS Flow単位(QFI/5QI)でのレート制限・優先度制御・マーキング等を実施
使用量計測(課金) URR に基づきトラフィック量を計測し、SMFへ使用量報告(Usage Report)。課金・使用量上限管理の基礎となる
DN接続(N6) N6 でデータネットワーク(インターネット、IMS、社内網等)へ抜ける出口。ルーティング/NAT等の具体はネットワーク構成に依存(実装依存
上り方向のルーティング 上り(UE→DN)パケットの分類・転送。宛先やトラフィック種別に応じたルーティング
パケット検査 パケットヘッダの検出(PDRのマッチング)を行う。より深い検査(DPI等、アプリ識別)の可否・範囲は実装依存
UL CL / Branching Point 複数のUPF/DNへの分岐(Uplink Classifier / Branching Point)を担う構成もある。採用有無・配置は実装/構成依存
PDU Session アンカー セッションのIPアンカー(PSA: PDU Session Anchor=セッション中UEのIPを保持する固定出口)となるUPFとしての役割。SSC mode(Session and Service Continuity mode: セッション継続性のモード、詳細は上級)により維持/変更(構成依存
項目 内容
制御方法 SBIを持たず、N4(PFCP) でSMFに制御される(他NFのようにサービスAPIを公開しない)
保持情報 N4セッション(PDR/FAR/QER/URR等の転送規則)、TEID、UE IP、使用量カウンタ
関連Interface N3(gNB, GTP-U), N4(SMF, PFCP), N6(DN), N9(他UPF, GTP-U)
障害時の影響 配下のユーザデータが流れなくなる(土管の断。制御は生きていてもデータ通信不可)

UL CL / Branching Point / エッジ配置について: 上りトラフィックを複数のUPFやローカルDN(エッジ)へ振り分ける UL CL(Uplink Classifier)Branching Point、およびUPFをエッジに置くローカルブレイクアウト構成は、採用有無・配置ともに実装/構成依存です。3GPPは仕組み(TS 23.501)を規定しますが、実際に使うかどうかはオペレータ設計に委ねられます。本ページでは架空の配置例は示しません。

Architecture

UPFは5GCのユーザプレーンに位置し、制御プレーンのSMFにN4で制御される「転送実体」です。CUPSにより、制御(SMF)と転送(UPF)が分離されている点がこの章の主役です。

flowchart LR
  gNB["gNB (基地局)"]
  SMF["SMF (制御)"]
  UPF["UPF (転送)"]
  UPF2["他UPF"]
  DN[(Data Network)]

  SMF -- "N4 (PFCP) 制御" --> UPF
  gNB == "N3 (GTP-U)" ==> UPF
  UPF == "N9 (GTP-U)" ==> UPF2
  UPF == "N6" ==> DN

図の読み方: SMFはN4(PFCP)でUPFに転送ルール(PDR/FAR/QER/URR)を指示しますが、SMF自身はユーザデータを扱いません(細い制御線)。実データ(太線)は gNB からN3(GTP-U)でUPFへ入り、UPFがN6でDNへ抜けます。複数UPFを経由する場合はUPF間をN9(GTP-U)で結びます。制御(N4)と転送(N3/N6/N9)が分かれているのがCUPSです。

なお、UPFをエッジ(基地局近傍)に置くか中央に置くか、UL CL/Branching Point で分岐させるかは実装/構成依存であり、上図は基本形です。

Interface

UPFが終端する主なInterfaceと役割です。

Interface 両端 Protocol 役割
N3 gNB ⇔ UPF GTP-U 無線アクセス側のユーザプレーントンネル。UEのデータパケットをTEIDで識別して運ぶ
N4 SMF ⇔ UPF PFCP SMFがUPFへ転送規則(PDR/FAR/QER/URR)を設定・制御する(CUPSの制御線)
N6 UPF ⇔ DN (IP等) データネットワーク(インターネット/IMS/社内網等)への接続口
N9 UPF ⇔ UPF GTP-U UPF間のユーザプレーントンネル(複数UPF構成やホームルーテッドローミング等)

各Interfaceの個別ページ(N3 / N4 / N6 / N9)も参照できます。一覧は Interface辞典、GTP-U / PFCP の詳細は Protocol辞典 を参照してください。

Procedure での登場

PDU Session Establishment(PDUセッション確立) において、UPFは転送実体として登場します。SMFがUPF選択(UPF selection)を行い、N4 Session Establishment(PFCP) で PDR/FAR/QER 等のルールをUPFに設定します。このときUPF側のN3 TEIDが割り当てられ、その後 N4 Session Modification でgNB側のN3 TEIDが反映されて、上下のGTP-Uトンネルが揃い、ユーザプレーンが疎通します。

つまりUPFは、SMFから「こう転送しろ」というルールを受け取って準備し、TEID交換が完了した時点でデータが流れ始めます。

この N4のEstablishment→Modificationの2段構え を含む詳しいCall Flow(メッセージ順序・IE・状態遷移)は、重複を避けるため PDU Session Establishment を参照してください。本ページでは手順の詳細は繰り返しません。

EPCとの比較

  • 4Gでは: ユーザプレーンの転送は SGW-U / PGW-U(S-GW/P-GWのユーザプレーン部分)が担っていました。当初は制御と転送が一体でしたが、4G後期に CUPS(PGW-C/PGW-U 等への分離、Sxインターフェース) がオプションとして導入されました。
  • 5Gでは: 転送機能を UPF に集約し、最初からSMF(制御)とUPF(転送)が分離した標準アーキテクチャになっています。その制御インターフェースが N4(PFCP) です。ユーザプレーンのトンネルは4Gと同じ GTP-U を N3/N9 で使います。
4G (EPC) 5G (5GC)
SGW-U / PGW-U(ユーザプレーン転送部) UPF
PGW-C / PGW-U 分離(CUPS, 後付けオプション) SMF / UPF 分離(CUPS標準化)
Sx(CUPSの制御IF) N4(PFCP)
GTP-U(S1-U / S5-U 等) GTP-U(N3 / N9)
APN(接続先指定) DNN(+S-NSSAI〈スライス識別子〉でスライス指定)

CUPSは5Gで標準化された

4Gでも後期に制御/転送分離(CUPS)が導入されましたが、5Gでは最初からSMF/UPF分離が標準で、制御IFが N4(PFCP) です。転送プロトコルがGTP-Uである点は4Gから引き継がれています。

Release差分

不確かなものは要確認とし、断定しません。

  • Rel-15: UPFの基本機能(N3/N4/N6/N9終端、N4ルール適用、QoS適用、使用量計測、CUPS標準化)を規定。
  • Rel-16: Ethernet PDU / TSC(時間高精度通信)等の拡張に伴うユーザプレーン機能の拡充。具体的な章番号・織り込み範囲は要確認
  • Rel-17以降: さらなる拡張が継続。具体項目・章番号は要確認

UP完全性保護の実施主体について

ユーザプレーンの完全性保護・暗号化は、無線区間(UE⇔gNB, PDCP層)で行われるのが基本です。UPF(N3/N9のGTP-U区間)における保護の実施主体・範囲については仕様(TS 33.501)を個別確認する必要があり、本ページでは断定せず要確認とします。

3GPP Specification

Spec 内容
TS 23.501 §6.2.3 UPFの機能定義(Network Function の役割)
TS 23.501 §5.6 / §5.8 PDU Session・ユーザプレーン管理(UL CL/Branching Point等)。細目章番号は要確認
TS 23.502 §4.3.2.2 手続き(PDU Session Establishment 等)でのUPFの動作
TS 29.244 PFCP(N4のセッション制御。PDR/FAR/QER/URR 等の規則)。個別章番号は要確認
TS 29.281 GTP-U(N3/N9のユーザプレーントンネル)。個別章番号は要確認

章番号の扱い

TS 23.501 §6.2.3 はUPFの機能定義として参照しています。UL CL/Branching Point等の細目章番号、および TS 29.244(PFCP)/ TS 29.281(GTP-U)の個別章番号は版により異なる場合があり、一部は要確認としています。PDR/FAR/QER/URR の各IE・適用順序の細部も要確認です。

Summary

  • UPFは5GCのユーザプレーン(データ転送)の実体であり、SMFの指示どおりにパケットを転送する転送専任NF
  • SMFから N4(PFCP)PDR(検出)/FAR(転送)/QER(QoS)/URR(使用量計測) を受け取り、全パケットに適用する。
  • 終端Interfaceは N3(gNB, GTP-U)・N4(SMF, PFCP)・N6(DN)・N9(他UPF, GTP-U)。SBIは持たない。
  • CUPS により制御(SMF)と転送(UPF)が分離され、UPFだけを独立にスケール・エッジ配置できる(配置は実装/構成依存)。
  • 4GのSGW-U/PGW-Uに相当し、GTP-Uは共通、制御はN4(PFCP)でCUPSが標準化された。
  • UL CL/Branching Point・エッジ配置・DPI等の深い検査は実装/構成依存

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