title: N10 — SMF ⇔ UDM(Nudm_SDM: SM加入データ取得 参照点) description: SMFとUDMを結ぶN10インターフェース。N4(PFCP)と異なりSBI(Service Based Interface)であり、実体はUDMが提供するサービスNudm(SDM: Subscriber Data Management)。SMFがHTTP/2+JSON over TLS上でセッション管理加入データ(許可DNN・既定QoS等)を取得し、PDUセッション確立の判断に使う仕組みを、Why→What→Howで解説。 keywords: - N10 - Nudm - SDM - UDM - SMF - HTTP2 - SBI - SM加入データ - DNN - TS 29.503 tags: - Interface - Data - Rel-15 category: Interface
N10 — SMF ⇔ UDM(Nudm_SDM: SM加入データ取得 参照点)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- N10が SBI(Service Based Interface) であり、N4(PFCP/UDP)とはProtocol/Transportが根本的に異なることを説明できる。
- N10の実体がUDMの提供するサービス Nudm_SDM(Subscriber Data Management, TS 29.503) であることを説明できる。
- SMFがUDMから セッション管理加入データ(Session Management Subscription Data/許可DNN・既定QoS等) を取得し、PDUセッション確立の判断に使う流れを説明できる。
- 「参照点N10」と「サービスNudm_SDM」が同じものの2つの見方であることを説明できる。
- 4G(EPC)の S6a/Gr(MME/SGSN ⇔ HSS, Diameter/MAP) のSM関連加入者プロファイル取得との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA / SBI と HTTP/2・TLS の位置づけ → Protocol辞典
- N10の両端のNF → SMF / UDM
- PDUセッション確立で加入データがどう使われるか → PDU Session
- Interfaceと参照点の考え方 → Interface辞典
Why — なぜ必要なのか¶
SMFはPDUセッションを張る際、「このUEはどのDNN(4GのAPN相当)を使えるのか」「そのDNNの既定のQoS(5QI/ARP)やSession-AMBRは何か」「静的IPを割り当てる契約か」を知らなければなりません。しかしこれらは加入者ごとの契約情報であり、SMF自身が持っているわけではありません。これらは事業者の加入者プロファイルの元締めである UDM(背後のUDRに実データ)にあります。
そこで、SMFがUDMへ「このUEのセッション管理加入データを下さい」と問い合わせる道が要ります。これがN10です。SMFはN10でUDMからSM加入データを取得し、それに基づいて許可DNN・既定QoS・AMBR等を判断してセッションを組み立てます。N10が無ければ、SMFは加入者ごとの契約に沿ったセッション制御ができません。
例え話: N10は、セッション担当(SMF)が本社の会員名簿(UDM)に契約プランを照会するホットラインです。担当は「この客はどのプラン(許可DNN)で、既定の品質(QoS/AMBR)は何か」を専用回線で問い合わせ、その回答に従って回線を張ります。モビリティ担当(AMF)向けの照会窓口が N8 なら、セッション担当(SMF)向けの照会窓口がN10です。
Overview — 概要¶
N10は SMF ⇔ UDM を結ぶ参照点です。ただしN10はSBI(Service Based Interface)である点が、N4(PFCP/UDP)と決定的に異なります。SBIとはNF同士がWeb API(HTTP)でサービスを呼び合う仕組みで、共通の転送として HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS を用います。
N10の実体は、UDMが提供するサービス Nudm_SDM(Subscriber Data Management, TS 29.503) です。SMFはこのサービスを呼び出して セッション管理加入データ(Session Management Subscription Data) を取得します。さらに SDM_Subscribe/Notify により、その加入データが変更された場合の変更通知を購読できます。
参照点N10とサービスNudm_SDMは同じものの2つの見方
3GPPのアーキテクチャ図では 参照点として N10(SMF⇔UDM) が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として UDMのサービス Nudm_SDM として実装されます。つまり「N10」と「Nudm_SDM」は、同じSMF⇔UDM間の連携を、参照点の視点/サービスの視点で見たものです。どちらも指しているものは同一で、呼び方(視点)が違うだけ、と捉えてください。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
N10を、セッション担当と会員名簿の契約プラン照会に例えます。
あなたのスマホがデータ通信(PDUセッション)を始めようとすると、セッション担当のSMFが動きます。SMFは「この客はどのDNN(接続先)を使ってよくて、既定の品質(QoS)や速度上限(AMBR)はどうか」を自分では持っていないので、会員名簿のUDMに問い合わせます。UDMは契約情報(背後のUDRにある加入データ)を返します。SMFはこの契約情報どおりに、許可されたDNN・既定QoSでセッションを構築します。
この問い合わせは、専用の電話回線(N4のような専用プロトコル)ではなく、社内Webシステム(HTTP)でリクエストを投げて回答をもらうイメージです。これが SBI(Service Based Interface)=NF同士がWeb API(HTTP/2)で会話する仕組みです。要求も応答も、人間に読みやすい JSON という書式でやり取りされます。
このWeb APIでは、加入データ(リソース)に「住所(URI)」を与え、そこにGET等のHTTP操作を投げて取得します。さらに「この加入データが変わったら教えて」という購読(Subscribe)を登録しておけば、UDM側から変更通知(Notify)が飛んできます。この作法をRESTfulと呼びます。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Protocol | HTTP/2 + JSON(RESTful)— SBI(Service Based Interface)の共通スタック |
| サービス | Nudm_SDM(Subscriber Data Management, UDMが提供)— TS 29.503 |
| SBI framework | TS 29.500 / TS 29.501 系(SBIの共通規約・OpenAPI定義) |
| 下位Transport | TCP、TLS で保護(機密性・完全性・認証)— TS 33.501 |
| ポート | SBIの待受ポートは実装依存(NRF登録のエンドポイントで解決)。特定番号は断定しない |
| 特徴 | 専用L4プロトコルではなくWeb技術ベース。HTTPメソッド(GET/POST/DELETE)+リソースURIで操作。RESTful |
N4のような専用L4ではなくWeb技術ベース
N4は PFCP over UDP という専用の下位プロトコルを持ちますが、N10にはそれは一切当てはまりません。N10はSBIなので、他のSBI(N7/N8/N11 等)と同じく HTTP/2 over TLS を共通の土台として使います。したがってN10の解析にSCTP/PFCP固有のフィルタやポート番号を流用してはいけません。
Architecture¶
N10がSMFとUDMを結び、UDMが背後のUDR(Nudr)から実データを取り、SMFがN7でPCF・N4でUPFとも連携する文脈を示します。
flowchart LR
SMF["SMF"]
UDM["UDM"]
PCF["PCF"]
UPF["UPF (転送)"]
UDR[("UDR (加入データ)")]
SMF == "N10 (Nudm_SDM / HTTP2)" ==> UDM
UDM -- "Nudr (加入データ取得)" --> UDR
SMF -. "N7 (Npcf_SMPolicyControl)" .-> PCF
SMF == "N4 (PFCP)" ==> UPF
classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
class SMF,UDM ctrl;
図の読み方: 太い線(==>)のN10がSMF⇔UDMのSM加入データ取得(SBI/HTTP2)です。UDMは自らデータを抱えるのではなく、背後の UDR から Nudr で加入データを取り出します。SMFはN10で得た許可DNN・既定QoS等を判断材料に、必要なら N7(Npcf) でPCFへポリシーを問い合わせ、N4(PFCP)でUPFへ転送規則を反映します(右の太線)。N10は「セッションを張るための契約情報の取得」に位置づけられる点に注目してください。
利用Procedure¶
N10は PDU Session Establishment(PDUセッション確立) の中で、SMFがUDMからSM加入データを取得する際に使われます。
- SM加入データ取得(Nudm_SDM_Get): PDU Session確立時、SMFがUDMへ問い合わせ、セッション管理加入データ(許可DNNリスト・DNNごとの既定5QI/ARP・Session-AMBR・静的IP割当有無・UE-AMBR等)を取得する。
- 変更通知の購読(Nudm_SDM_Subscribe): 必要に応じて、SMFはその加入データが変わった場合の変更通知(Notify)を購読する。以後、UDM側で加入データが変わると通知が飛ぶ。
- 判断とその後の連携: 取得した許可DNN・既定QoSに基づき、SMFはセッションを許可/構築するかを判断し、必要なら N7(Npcf)でPCFへポリシー連携、N4(PFCP)でUPFへ転送規則を設定する。
手順の詳細な流れ(メッセージシーケンス、条件、IE等)は PDU Session に集約されています。手順の細部はそちらを参照してください。各オペレーションの正確なメソッド・URI・呼び出し順は要確認とします。
主なMessage¶
N10はSBIなので、メッセージはHTTPメソッド + リソース操作の形を取ります(NGAPのようなprocedureCodeではなくRESTful操作)。代表的なサービスオペレーションは次のとおりです。
| サービスオペレーション | HTTP操作(概念例) | 用途 |
|---|---|---|
| Nudm_SDM_Get | GET(リソース取得) | SM加入データ(許可DNN・既定QoS/AMBR等)の取得 |
| Nudm_SDM_Subscribe | POST(購読リソース生成) | 加入データ変更通知の購読登録 |
| Nudm_SDM_Unsubscribe | DELETE(購読リソース削除) | 変更通知購読の解除 |
| Nudm_SDM_Notify | POST(UDM→SMFへ通知callback) | 加入データ変更のSMFへの通知 |
HTTP操作の対応は概念整理です: 上表の「HTTP操作」は理解のための対応づけであり、各オペレーションの正確なメソッド・リソースURI・呼び出し方向はTS 29.503のOpenAPI定義に従います。厳密なメソッド割り当ては要確認とします。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
N10はSBIなので、キャプチャ上は HTTP/2 として観測されます(PFCP/SCTPのようなL4専用プロトコルは現れません)。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| HTTP/2メッセージを抽出 | http2 |
| ヘッダのパスで絞る(概念) | http2.headers.path(:path に nudm-sdm を含む) |
| JSONボディを見る | json(復号後) |
Decodeの見どころ:
- N10は TLSで暗号化されます。中身(HTTP/2ヘッダやJSONボディ)を見るには復号鍵(TLSセッションキー等)が必要です。鍵が無ければ
tlsの暗号化ペイロードとしてしか見えません。 - 復号できれば、HTTP/2の ヘッダ(
:method= GET等、:pathに.../nudm-sdm/...を含むリソースパス)でオペレーションを識別できます。 - ボディは JSON(SM加入データ、DNN構成、QoS/AMBR情報等)で、人間に読みやすい構造で入っています。
- N4のPFCP(バイナリ、UDP上)と違い、N10はWeb的(HTTP/JSON)である点が観察の要です。SCTP/PFCP固有のフィルタは使いません。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: SM関連の加入者プロファイル(APN契約・APNごとの既定QoS・AMBR等)は HSS(Home Subscriber Server) が保持し、MME/SGSN が S6a/Gr(S6aはDiameterベース、TS 29.272)で取得していました。すなわち、モビリティ管理ノード側が加入者プロファイルをまとめて取得し、その中にSM関連の加入情報も含まれていました。
- 5Gでは: HSSの役割を UDM(実データはUDR)が引き継ぎ、SM加入データの取得は セッション担当のSMFが N10(Nudm_SDM)で直接 行う形に SBI化されました。加入データの取得思想は継続しつつ、Diameterから HTTP/2 + JSON(SBI) へ置き換わっています(TS 29.503)。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| S6a(MME ⇔ HSS)のSM加入部 | N10(SMF ⇔ UDM) |
| Diameter(専用L4上) | SBI: HTTP/2 + JSON over TLS |
| TS 29.272(S6a/S6d) | TS 29.503(Nudm_SDM) |
| APN契約・既定QoS等の加入者プロファイル | DNN契約・既定QoS等のSM加入データ |
認証ベクトル(AKA)取得はSM加入データとは別系統で、5Gでは N13(UDM⇔AUSF, Nudm_UEAU) 側の話です。N10はあくまでSM加入データ(許可DNN・QoS等)の取得に位置づけられます。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 29.503 — Nudm サービス群(Nudm_SDM: Subscriber Data Management, N10)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 29.500 / TS 29.501 — SBI framework(技術規約 / 設計原則・OpenAPI)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N10の定義)
- 3GPP TS 23.502 — PDUセッション確立等の手順におけるN10(Nudm_SDM)の利用
- 3GPP TS 33.501 — SBIのセキュリティ(TLS等)。個別章番号は要確認
注記(要確認): N10の実体が Nudm_SDM(TS 29.503)であること、SBI共通framework が TS 29.500/29.501 系であること、参照点N10とサービスNudmが同じ連携の2つの見方であることは、3GPPアーキテクチャの一般的整理です。各サービスオペレーションの細目章番号・正確なリソースURI、およびSM加入データに含まれる具体値(5QI/AMBR等)は Release により差異があるため個別には要確認とします。
Summary¶
- N10は SMF ⇔ UDM を結ぶ参照点だが、SBI(Service Based Interface)である点がN4(PFCP/UDP)と根本的に異なる。
- Protocolは HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS、実体はUDMのサービス Nudm_SDM(Subscriber Data Management, TS 29.503)。
- SMFはN10で セッション管理加入データ(許可DNN・DNNごとの既定QoS/AMBR等) を取得し、PDUセッション確立の判断に使う。変更通知は SDM_Subscribe/Notify で購読する。
- 参照点N10 = サービスNudm_SDM は同じSMF⇔UDM連携の2つの見方(本サイトの参照点/サービスの二重性 → UDM)。
- 4Gの S6a/Gr(MME/SGSN ⇔ HSS, Diameter, TS 29.272) のSM加入部に相当し、5Gでは SBI化(TS 29.503)された。
Next Step¶
- UDM — N10の相手側。加入データ管理の中枢(実データはUDR)
- SMF — N10でSM加入データを取得し、PDUセッションを構築するNF
- PDU Session — SM加入データを使うPDUセッション確立の手順(詳細)
- N8 — AMF⇔UDM。モビリティ担当向けの加入データ取得(N10と対の関係)
- N7 — SMF⇔PCF。取得した加入情報を踏まえたポリシー連携
- Interface辞典 — N11/N13 ほか参照点の確認