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PCF — Policy Control Function

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 関連NF: AMF, SMF, AF, UDR / 関連Interface: N5, N7, N15

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • PCFが5GCで果たす役割(ポリシー制御の中枢)を一言で説明できる。
  • ポリシーの3種類(AM Policy / SM Policy / UE Policy)の違いを説明できる。
  • PCC rule(QoS・課金・ゲーティング)とURSP(UE Route Selection Policy)が何かを説明できる。
  • PCFがどのInterface(N5/N7/N15 ほか)でどのNF・AFと連携するかを図示できる。
  • PDU Session確立の中でPCFがどのタイミングで登場するかを説明できる。
  • 4G(EPC)のPCRF(Gx/Rx)との違い(SBI化、URSPの新規追加)を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

  • SBA(Service Based Architecture)とNF、SBIの基礎 → カリキュラム
  • PDU SessionとQoS(5QI/QFI)の考え方 → PDU Session
  • AMF/SMFの役割(PCFにポリシーを問い合わせる側) → AMF
  • QoSやセッションの基礎概念(まだなら) → カリキュラム

この章で学べること

まずWhy(PCFが無いと何が困るか)から入り、What(ポリシーの3種別・PCC rule・URSP・役割・API)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(PDU Sessionでの登場、EPC比較、参照Spec)へ進みます。

なお、PDU Session確立の手順そのものの詳細は PDU Session に集約されています。本ページはPCFをNFとして(役割・ポリシー種別・連携先)に焦点を当て、手順の細部はそちらへ誘導します。

Why — なぜPCFが必要か

ネットワークは、契約プランや利用状況に応じて「この通信はどのくらいの品質(QoS)で流すか」「どう課金するか」「このアプリはこのスライス/DNN(Data Network Name=接続先ネットワークの識別子)へ流すべきか」を判断しなければなりません。この判断を、NFごとにバラバラに実装していたら、事業者のサービス規約を変えるたびに全NFを直す羽目になります。

そこで、QoS・課金・アクセス制御・経路選択といったルールを一箇所に集約して決める部門が必要になります。これがPCF(Policy Control Function)です。PCFがあることで、事業者は「ゴールド会員は帯域優先」「動画は定額」「この業務アプリは専用スライスへ」といった事業者ポリシーを一元的に管理でき、各NF(AMF/SMF/UE)はPCFが決めたルールに従って動くだけで済みます。

PCFが無い(または連携しない)と、各NFはあらかじめ設定された静的な既定値でしか動けず、加入者ごと・アプリごとのきめ細かい制御(動的PCC)ができません。

例え話: PCFは、会員ランクごとのサービス規約を決める規約・約款部門です。受付(AMF)や現場(SMF/UPF)は、この部門が定めた規約書(ポリシー)を受け取り、それに従って来訪者を案内し、回線品質を決めます。規約部門は、会員名簿を持つ人事(UDR)から会員ランクを取り寄せ、外部の提携店(AF)からの「この客にはVIP対応を」という要望も受け付けて、最終的な規約を確定します。

Overview — 概要

PCF(Policy Control Function)は、5GCにおけるポリシー制御の中枢です。次の3種類のポリシーを、それぞれ担当NFへ提供します。

  • AM Policy(Access and Mobility Policy) … AMFへ(N15, Npcf_AMPolicyControl)。サービスエリア制限、RFSP(無線周波数選択優先度)、UE-AMBR(端末単位の最大帯域)等のアクセス・モビリティに関するポリシー。
  • SM Policy(Session Management Policy) … SMFへ(N7, Npcf_SMPolicyControl)。PCC rule(QoS・課金・ゲーティング)を含むセッション/QoS/課金ポリシー。
  • UE Policy … UEへ(AMFを経由して配送)。URSP(UE Route Selection Policy) 等、UE側の経路選択ポリシー。

PCFは加入者ごとのポリシーデータをUDR(Unified Data Repository)から取得し(Nudr)、外部アプリからの要求はAF(Application Function)から受け付けます(N5, Npcf_PolicyAuthorization)。永続的なポリシーデータの実体はUDRに格納され、PCFはそれを取り出して個別のポリシー決定を行う、という分業になっています。

PCFは4GのPCRF(Policy and Charging Rules Function)に相当しますが、インターフェースがSBI化され、UE Policy(URSP)という5G新規の機能が加わっています。

Basic Concept — 初心者向け説明

まず「ポリシー」とは、「こういう条件のときは、こう扱う」というルールのことです。PCFはこのルールを決めて配る役です。ルールの配り先で3種類に分かれます。

  • AM Policy(アクセス・モビリティのルール) … 「この加入者はこのエリアでは使えない」「待受時の優先度はこれ」といった、つながり方のルール。受付役のAMFに渡します。
  • SM Policy(セッション・QoSのルール=PCC rule) … 「この通信は帯域◯、遅延優先、これは定額課金」といった、通信の品質と課金のルール。セッション担当のSMFに渡します。この中身が PCC rule です(後述)。
  • UE Policy(端末側のルール=URSP) … 「このアプリの通信はこのスライス/接続先へ流しなさい」という、どの経路を選ぶかを端末自身に教えるルール。AMF経由でUEへ届けます。

PCC rule とは(やさしく)

PCC rule(Policy and Charging Control rule) は、SM Policyの中核で、ある通信フローを「どう扱うか」を一枚にまとめたルールです。ざっくり以下を含みます。

  • どの通信か(サービスデータフロー: 宛先IPやポート等で識別)
  • QoS(5QI/QoS特性、保証帯域 GBR 等 — 品質の指定)
  • 課金(オンライン/オフライン、課金キー — どう料金計算するか)
  • ゲーティング(gating)(そのフローを通す/止める — 許可制御)

つまりPCC ruleは「この通信は、この品質で、この課金で、通す(または止める)」という指示書です。

URSP とは(やさしく)

URSP(UE Route Selection Policy) は、UE(端末)に対して「アプリごとにどのPDU Session(どのDNN/スライス)を使うか」を指示するルールです。たとえば「業務アプリは社内向けスライスへ、動画は一般向けDNNへ」といった振り分けを、端末自身が判断できるようにします。URSPはUE Policyの一部としてPCFが決め、AMF経由でUEへ配送されます。URSPは5Gで新しく整備された仕組みです。

Network Function 詳細

項目 内容
役割 ポリシー制御の中枢。AM Policy(AMFへ)、SM Policy=PCC rule(SMFへ)、UE Policy=URSP(UE/AMFへ)を決定・提供。AFからのポリシー要求受付。UDRから加入者ポリシーデータ取得
保持情報 Policy Association(AM/SM/UE)のコンテキスト。加入者ポリシーの実体はUDRに格納(PCFは取得して決定に利用)
主な機能 ① AM Policy Association(N15)② SM Policy Association=PCC rule決定(N7)③ UE Policy(URSP)決定(AMF経由でUE配送)④ AF連携(N5, PolicyAuthorization)⑤ UDRからのポリシーデータ取得(Nudr)
利用する主なAPI(他NFへ呼ぶ) Nudr(DataRepository)— UDRから加入者ポリシー取得。Nudr以外の連携は実装/構成依存
提供するAPI(自分が公開) Npcf(AMPolicyControl, SMPolicyControl, PolicyAuthorization, UEPolicyControl 等)
関連Interface N15(AMF), N7(SMF), N5(AF), Nudr(UDR連携)
障害時の影響 動的ポリシーが適用されず、QoS/課金/経路選択のきめ細かな制御ができない(静的既定値での継続可否は構成依存=実装依存

BSF(Binding Support Function)について: ひとつのPDU Sessionに複数のPCFが関わりうる構成では、あるセッションを、それを担当するPCFに結びつける(binding) 対応づけが必要になります。この「セッション ⇔ 担当PCF」の結合情報を管理するのが BSF(Nbsf)です。AFやNEFが「このセッションのポリシーを扱うPCF」を見つける際にBSFを参照します。BSFを配置するか、binding情報をどう解決するかは実装/構成依存です(詳細は NF辞典 を参照)。

Architecture

PCFは5GC制御プレーンにおいてポリシー決定のハブとして機能し、AMF・SMF・AF・UDR(およびNEF/BSF)と連携します。

flowchart LR
  UE(("UE"))
  AMF["AMF"]
  SMF["SMF"]
  PCF["PCF"]
  AF["AF (アプリ)"]
  NEF["NEF"]
  UDR[("UDR (ポリシーデータ)")]

  AMF -- "N15 (Npcf_AMPolicyControl)" --> PCF
  SMF -- "N7 (Npcf_SMPolicyControl)" --> PCF
  AF -- "N5 (Npcf_PolicyAuthorization)" --> PCF
  NEF -. "外部AFはNEF経由も可" .-> PCF
  PCF -- "Nudr (ポリシー取得)" --> UDR
  PCF -. "UE Policy(URSP)はAMF経由で配送" .-> AMF
  AMF -. "URSP" .-> UE

図の読み方: AMFはN15でAM Policyを、SMFはN7でSM Policy(PCC rule)を、AFはN5でアプリ要求(PolicyAuthorization)をそれぞれPCFに問い合わせます。PCFはNudrでUDRから加入者ポリシーを取り出して決定に使います。UE Policy(URSP)はPCFが決め、AMFを経由してUEへ配送されます。外部のAFはPCFに直結せずNEFを経由する構成もあり、AF-PCF直結かNEF経由かは実装/構成依存です。

注記(実装/構成依存): 上図のNEF経由の破線、およびBSFによるbindingは、事業者/ベンダーの構成に依存します。信頼ドメイン内のAFはN5でPCFに直結し得ますが、サードパーティAFはNEFを介するのが一般的です(構成依存)。

Interface

PCFが持つ主なInterfaceと役割です。

Interface 両端 サービス(API) 役割
N15 AMF ⇔ PCF Npcf_AMPolicyControl アクセス・モビリティポリシー(AM Policy)の取得・更新
N7 SMF ⇔ PCF Npcf_SMPolicyControl セッション/QoS/課金ポリシー(SM Policy = PCC rule)の取得・更新
N5 AF ⇔ PCF Npcf_PolicyAuthorization AFからのアプリ要求受付(QoS要求・イベント購読等)
Nudr(UDR連携) PCF ⇔ UDR Nudr(DataRepository) 加入者ポリシーデータの読み書き

N36 / Nudr の扱い(要確認・実装依存): PCFとUDR間のデータ取得は、SBIとしては Nudr(DataRepository サービス)で表されます。参照点名として N36(UDR ⇔ PCF)が用いられることがありますが、SBI化された5GCではサービス名 Nudr で記述するのが一般的です。参照点表記(Nxx)とサービス表記(Nxxx)の対応は文脈により異なるため、厳密な参照点番号は要確認です。

個別のInterface解説(N5 / N7 / N15)も参照できます。一覧は Interface辞典 をどうぞ。

Procedure での登場

PDU Session確立(UE-requested PDU Session Establishment)では、SMFがセッションを組み立てる過程で、必要に応じて SMF↔PCF 間で SM Policy Association を確立し、PCC rule(認可済みQoS・課金) を取得します(N7, Npcf_SMPolicyControl_Create)。取得したPCC ruleに基づき、SMFはUPFの転送規則やQoS Flow(QFI/5QI)を決定します。

このPCF連携は任意/条件付きで、動的PCC構成のときに行われます。PCFと連携しない(静的PCC)構成では、SMFの既定QoSでセッションが継続されます(構成依存)。

一方、AM Policyは登録(Registration)などのモビリティ管理の文脈でAMF↔PCF間(N15)で扱われ、UE Policy(URSP)はPCFが決定してAMF経由でUEへ配送されます。

手順の詳細な流れ(メッセージシーケンス、条件、IE等)は PDU Session に集約されています。特にSM Policy Association確立の位置づけはそちらの「SM Policy Association(PCF連携)」の記述を参照してください。

EPCとの比較

  • 4Gでは: PCRF(Policy and Charging Rules Function) がポリシー・課金ルールを決定していました。SMF/PGW側とは Gx、アプリ側(AF/P-CSCF等)とは Rx という専用インターフェース(Diameterベース)で連携していました。PCC framework(PCC rule によるQoS・課金・ゲーティング制御)は4Gから存在します。
  • 5Gでは: PCRFの役割を PCF が引き継ぎ、インターフェースを SBI化しました。Gx相当が N7(Npcf_SMPolicyControl)、Rx相当が N5(Npcf_PolicyAuthorization) になります。さらに、アクセス・モビリティ向けの AM Policy(N15) と、端末の経路選択を制御する UE Policy(URSP) が5Gで整備されました。
4G (EPC) 5G (5GC)
PCRF PCF
Gx(PCRF ⇔ PGW/PCEF, Diameter) N7(Npcf_SMPolicyControl, SBI)
Rx(PCRF ⇔ AF, Diameter) N5(Npcf_PolicyAuthorization, SBI)
(4Gに相当なし) N15(AM Policy)
(4Gに相当なし) UE Policy(URSP)

PCC framework自体(PCC ruleによる制御思想)は4Gから継続しています。5Gでの主な変化は SBI化と、AM Policy / UE Policy(URSP) の追加です。

Release差分

  • Rel-15: PCFの基本機能(AM/SM Policy、PCC rule、UE Policy(URSP)、Npcf各サービス)を規定。
  • Rel-16: 機能拡張(例: TSC/時刻同期系ポリシー、ネットワークスライス関連の拡張 等)。具体的な章番号・項目は要確認
  • Rel-17: さらなる拡張。具体項目・章番号は要確認

3GPP Specification

  • 3GPP TS 23.501 §6.2.4 — PCFの機能定義(Network Function の役割)
  • 3GPP TS 23.503 — ポリシー・課金制御フレームワーク(PCC framework, PCC rule, URSP等のポリシーモデル)
  • 3GPP TS 29.507 — Npcf_AMPolicyControl サービス(AM Policy, N15)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 29.512 — Npcf_SMPolicyControl サービス(SM Policy = PCC rule, N7)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 29.514 — Npcf_PolicyAuthorization サービス(AF連携, N5)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 29.525 — Npcf_UEPolicyControl サービス(UE Policy配送)。要確認(URSPのポリシーモデル自体は TS 23.503 で規定)

注記(要確認): 各Npcfサービスと対応TS番号は上記の通りですが、細目の章番号は Release により差異があるため個別には要確認とします。URSPの内容モデルは TS 23.503、UE Policy配送のサービス仕様は TS 29.525 系という整理が一般的です(厳密な対応は要確認)。

Summary

  • PCFは5GCのポリシー制御の中枢で、AM Policy・SM Policy・UE Policyの3種を各担当へ提供する。
  • AM PolicyはAMFへ(N15)、SM Policy(PCC rule = QoS/課金/ゲーティング)はSMFへ(N7)、UE Policy(URSP)はAMF経由でUEへ配送する。
  • AFからのアプリ要求はN5(Npcf_PolicyAuthorization)で受け付け、加入者ポリシーはUDR(Nudr)から取得する。
  • PCC frameworkは4Gから継続、5GではSBI化UE Policy(URSP)の追加が主な変化。
  • 4GのPCRF(Gx/Rx)に相当する。AF-PCF直結かNEF経由か、BSFによるbindingは実装/構成依存

Next Step

  • PDU Session — SMFがPCFからPCC ruleを取得する手続き(詳細)
  • AMF — PCFにAM Policyを問い合わせる相手
  • Registration — AM Policyが関わるモビリティ管理の起点
  • 関連NF: SMF / AF / NEF / UDR / BSF — 用語の一覧は NF辞典
  • Interface辞典 — N5/N7/N15 の確認
  • ネットワークスライス — Network Slicing 章(URSP によるスライス経路選択の位置づけ)