コンテンツにスキップ

Charging — 5GCの課金(Converged Charging)

難易度: 中級〜上級 / 想定学習時間: 30分 / 前提: PDU Session確立, QoS / 主役: SMF, CHF / 主Interface: N40 (Nchf), N7

学習目標

この章を読み終えると、次のことができるようになります。

  • Charging(課金) が「利用量・時間・サービスに応じて料金を計算・記録する仕組み」であることを説明できる
  • オンライン課金(残高・与信・Quota割当)と オフライン課金(利用実績記録・CDR生成)の違いを説明できる
  • Converged Charging(オンライン/オフラインを1つのNF=CHFで統合)という5Gの特徴を説明できる
  • 課金の主なトリガ源が SMF であり、N40(Nchf_ConvergedCharging) を通じてCHFへ要求する流れを図示できる
  • 4GのOCS/OFCS(Gy/Rf)から5GのConverged Chargingへの進化を説明できる

前提知識

この章の焦点

CHFというNF自体の詳細は CHFページ、N40参照点のメッセージ詳細は N40ページ にあります。この章はそれらを踏まえ、「課金という手続きが5GC全体でどう流れるか」 に焦点を当てます。


Why — なぜ課金の仕組みが必要か

通信事業者は、加入者の利用量・利用時間・利用サービスに応じて料金を請求します。ここには2つの異なる要求があります。

  • 前払い(プリペイド) — 使う前に残高を確認し、残高の範囲内でだけ通信を許す(与信)。残高が尽きたら止める。
  • 後払い(ポストペイド) — 使った実績を正確に記録し、後でまとめて請求する。

この2つは動作タイミングが違います。前払いは 通信中にリアルタイムで残高を管理 する必要があり、後払いは 利用実績を漏れなく記録 できればよい。5GCでは、この双方を CHF(Charging Function) が中心となって担います。

例え話: 課金は「料金メーター+会計係」です。どれだけ使ったかを計測し(メーター)、前払いなら残高が足りるか確認して使わせ、後払いなら帳簿に記録します(会計係)。


What — オンライン課金・オフライン課金・Converged Charging

課金には大きく2種類あります。

種類 いつ効く 何をする 4Gでの担当
オンライン課金
(Online Charging)
通信中(リアルタイム) 残高を確認し、使ってよい分(Quota)を前もって割り当てる。使い切ったら再要求、尽きたら遮断(与信 OCS(Gy/Ro)
オフライン課金
(Offline Charging)
通信後(実績ベース) 利用実績を記録し、課金レコード(CDR: Charging Data Record)を生成する OFCS(Gz/Rf)

5Gでは、この2つを 別々のシステムではなく1つのNF(CHF)で統合的に処理 します。これを Converged Charging(統合課金) と呼びます(TS 32.240、TS 32.255)。

Quota(クォータ)とは

オンライン課金で、CHFがSMFへ「この分までは使ってよい」と前もって割り当てる利用可能量(例: 100MB、10分)です。SMFはQuotaの範囲で通信を通し、使い切る前にCHFへ次のQuotaを要求します。これにより、毎バイトごとにCHFへ問い合わせる必要がなくなります。

オンラインとオフラインの共存

同じPDU Sessionに対し、オンライン課金(与信)とオフライン課金(記録)が 同時に働くこともあります。Converged Chargingでは、SMFが1つのN40要求で両方の情報をCHFへ渡し、CHFが内部で振り分けます。


How — 課金はどこで起きるか(Architecture)

課金の主なトリガ源は SMF です。SMFはPDU Sessionのデータ利用量を(UPFの計量結果を通じて)把握し、N40でCHFへ課金要求を出します。

graph LR
    UE[UE] --- RAN[NG-RAN]
    RAN --- UPF[UPF
利用量を計量] UPF -->|計量報告| SMF[SMF
課金トリガ源] SMF -->|N40 Nchf| CHF[CHF
Converged Charging] PCF[PCF] -->|N7 課金ポリシー| SMF CHF -->|CDR| BS[課金システム
Billing Domain] CHF -->|残高照会| BAL[残高管理
Account Balance]

各Network Functionの役割

NF 課金での役割
UPF ユーザプレーンのパケットを計量(Usage Reporting)。SMFへ利用量を報告する
SMF 課金の主トリガ源。UPFの計量結果を集約し、N40でCHFへ課金要求を出す。Quotaを受け取りUPFへ計量ルールを設定
CHF Converged Charging本体。オンライン(残高/Quota)とオフライン(CDR生成)を統合処理
PCF 課金ポリシー(どのRating Groupで課金するか等)をN7でSMFへ指示

主なInterface

Interface 区間 役割
N40 (Nchf) SMF ⇔ CHF 課金要求。Nchf_ConvergedCharging(TS 32.290)。オンライン/オフライン統合
N7 (Npcf) SMF ⇔ PCF 課金ポリシー(Charging Control)をPCCルールとして配布(TS 29.512)
N4 (PFCP) SMF ⇔ UPF 計量ルール(URR: Usage Reporting Rule)の設定と利用量報告

Rating Group(レーティンググループ)

課金を分類する単位です。例えば「動画は高レート、SNSは低レート、特定アプリはゼロレーティング(無料)」のように、トラフィックをグループ分けして別々に計量・課金します。PCFがどのトラフィックをどのRating Groupに割り当てるかを決めます。


Procedure — 課金のCall Flow

オンライン課金(Quotaベース)の典型的な流れです。

sequenceDiagram
    participant UPF
    participant SMF
    participant CHF
    Note over SMF,CHF: (1) PDU Session確立時: 初期課金要求
    SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Create
(課金開始・Quota要求) CHF->>CHF: 残高確認・与信判定 CHF-->>SMF: Quota付与 (例: 100MB) SMF->>UPF: N4 URR設定
(100MBで報告するよう計量指示) Note over UPF: (2) 通信中: 計量 UPF->>UPF: パケットを計量 UPF->>SMF: N4 Usage Report
(Quota消費: 100MB到達) Note over SMF,CHF: (3) Quota枯渇前: 追加要求 SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Update
(消費報告 + 次Quota要求) CHF->>CHF: 残高減算・再与信 CHF-->>SMF: 次Quota付与 or 拒否 Note over SMF,CHF: (4) セッション終了時 SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Release
(最終消費報告) CHF->>CHF: 最終精算・CDR生成 CHF-->>SMF: 完了応答

Signal Flow(主要メッセージ)

# メッセージ 区間 意味
1 Nchf_ConvergedCharging_Create SMF→CHF 課金開始。初期Quota要求
2 (応答) Quota付与 CHF→SMF 与信OK。利用可能量を割当
3 N4 URR / Usage Report SMF⇔UPF 計量ルール設定と消費報告
4 Nchf_ConvergedCharging_Update SMF→CHF 消費報告+次Quota要求(通信中に繰り返す)
5 Nchf_ConvergedCharging_Release SMF→CHF セッション終了。最終精算・CDR生成

与信拒否(残高不足)時

オンライン課金でCHFが次Quotaを拒否した場合(残高不足など)、SMFはPDU Sessionを解放するか、特定の扱い(例: 課金画面へのリダイレクト)を行います。この挙動は事業者ポリシー・実装依存です。


EPC(4G)との比較

項目 4G EPC 5GC
オンライン課金 OCS(Online Charging System)、Gy/Ro参照点 CHF(Converged)
オフライン課金 OFCS(Offline Charging System)、Gz/Rf参照点 CHF(Converged)
統合の有無 オンライン/オフラインが別システム 1つのNF(CHF)に統合=Converged Charging
主トリガ源 PGW(PCEF) SMF
プロトコル Diameter(Gy/Rf) SBI(HTTP/2, Nchf)

5Gの最大の変化は、別々だったOCS/OFCSがCHFという1つのNFに統合され、SBI(HTTP/2)ベースになった点です。


Release差分

Release 変更点
Rel-15 Converged Charging(CHF)導入。Nchf_ConvergedCharging(TS 32.290)
Rel-16以降 スライス単位課金、イベント単位課金(Nchf_SpendingLimitControl等)の拡充

Spending Limit Control

PCFがCHFへ「加入者の利用が一定額(Spending Limit)に達したか」を問い合わせる仕組みもあります(Nchf_SpendingLimitControl)。これによりPCFは「上限到達後は速度制限」などのポリシーを発動できます。詳細は要確認(TS 32.240系)。


Trouble Shooting

症状 疑う箇所 確認ポイント
通信できるが課金されない オフライン課金のURR未設定 SMFがUPFへ計量ルール(URR)を設定しているか。CDRが生成されているか
残高があるのに接続拒否 オンライン課金の与信失敗 CHFの残高照会経路。N40応答でQuota拒否になっていないか
Quota枯渇で頻繁に切断 Quotaサイズが小さすぎ CHFの割当Quota量、SMFの再要求タイミング
ゼロレーティングが効かない Rating Group割当ミス PCFのPCCルール、対象トラフィックのRating Group

3GPP Specification

仕様 内容
TS 32.240 Charging architecture and principles(課金の全体アーキテクチャ)
TS 32.255 5G data connectivity domain charging(5Gデータ接続の課金)
TS 32.290 5G system; Services, operations and procedures of charging using SBI(Nchf)

章番号の粒度

上記TS番号は課金領域の主要仕様として確実です。各TS内の詳細な節番号(具体的なメッセージ定義位置等)は版により異なるため、精密な引用時は要確認。


FAQ

Q. オンライン課金とオフライン課金は排他ですか?

いいえ。同じPDU Sessionに対して両方が同時に働くこともあります。Converged ChargingではCHFが1つのNFで両方を扱います。

Q. 課金はSMFだけがトリガするのですか?

データ接続の課金は主にSMFがトリガします。ただしSMS課金など他のトリガ源もあり、それぞれ対応するNFがCHFへ要求します。この章はデータ接続(PDU Session)課金に焦点を当てています。

Q. CDRとは何ですか?

Charging Data Record(課金データレコード)。オフライン課金で生成される利用実績の記録です。後で課金システムが集計し請求に使います。


Summary

  • Charging(課金) は利用量・時間・サービスに応じて料金を計算・記録する仕組み
  • オンライン課金=残高/Quota/与信(リアルタイム)、オフライン課金=利用実績記録/CDR生成(実績ベース)
  • 5Gは両者を CHF に統合=Converged Charging(4GのOCS/OFCS統合)
  • 主トリガ源は SMFN40(Nchf_ConvergedCharging) でCHFへ要求
  • UPFが計量、SMFが集約、CHFが与信・精算・CDR生成

理解度チェック

Q1. オンライン課金とオフライン課金の違いを、動作タイミングの観点で説明してください。

オンライン課金は通信中にリアルタイムで残高を確認しQuotaを割り当てる(与信)。オフライン課金は通信後に利用実績を記録しCDRを生成する。前者は残高が尽きれば遮断でき、後者は記録が主目的。

Q2. Converged Chargingとは何か、4Gと比較して説明してください。

オンライン課金とオフライン課金を1つのNF(CHF)に統合する5Gの方式。4Gでは OCS(Gy/Ro)と OFCS(Gz/Rf)が別システムだったが、5GではCHFがSBI(Nchf)で両方を統合的に処理する。

Q3. 課金の主なトリガ源はどのNFで、どのInterfaceでCHFへ要求しますか?

主トリガ源はSMFN40(Nchf_ConvergedCharging) を通じてCHFへ課金要求を出す。UPFの計量結果をSMFが集約して要求に反映する。


Next Step