N4 — SMF ⇔ UPF(PFCP 参照点)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- N4が制御側SMFと転送側UPFを結ぶインターフェースであることを説明できる。
- N4のProtocolスタック(PFCP / UDP / IP)とポート(8805)を言える。
- N4の2層の手続き(Node手続き / Session手続き)を区別できる。
- SMFがUPFへ配布する PDR / FAR / QER / URR ルールが何をするものかを説明できる。
- N4がCUPS(制御と転送の分離)の要である理由を説明できる。
- 4G(EPC)のSx(Sxa/Sxb/Sxc)との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- PFCP と UDP の位置づけ → Protocol辞典
- N4を制御側で終端するNF → SMF
- N4を転送側で終端するNF → UPF
- CUPSとPDUセッションの全体像 → PDU Session Establishment
- Interfaceの考え方 → Interface辞典
Why — なぜ必要なのか¶
5Gでは「セッションをどう張り、どう転送させるか」を決める制御(頭脳=SMF)と、実際にパケットを流す転送(土管=UPF)を明確に分けました。これが CUPS(Control and User Plane Separation、制御と転送の分離) です。ところが分離しただけでは、頭脳(SMF)が下した判断が土管(UPF)に伝わりません。UPFはただの空の管のままで、「どのパケットを・どこへ・どの品質で流すか」を知りません。
そこで、制御側SMFが転送側UPFに指示を送り込む専用の道が必要になります。これがN4です。SMFはN4を通じてUPFに「このパケットはこう検出し、こう転送し、この品質で、量はこう計測せよ」というルールを配布します。N4が無ければ、SMFはUPFを操作できず、CUPSは成立せず、ユーザデータは1バイトも流れません。
例え話: N4は管制塔(SMF)と現場の作業員(UPF)をつなぐ無線回線です。管制塔は自分で荷物を運びませんが、無線で「あの荷物はこのレーンへ、優先度は高で」と指示を飛ばします。現場はその指示どおりに動きます。この指示を運ぶ回線がN4です。
Overview — 概要¶
N4は SMF ⇔ UPF を結ぶ制御インターフェースです。上を流れるProtocolは PFCP(Packet Forwarding Control Protocol)、その下は UDP over IP です。
N4の手続きは大きく2層に分かれます。
| 種別 | 説明 | 例 |
|---|---|---|
| Node手続き (Node related) | 特定セッションに紐づかない、SMFとUPFのノード間の基盤手続き | PFCP Association Setup, Heartbeat |
| Session手続き (Session related) | 個々のPDUセッション(N4セッション)に紐づく手続き | PFCP Session Establishment / Modification / Deletion |
N4の中核は、SMFがUPFへ配布する4種類の転送ルール PDR / FAR / QER / URR です。これらをUPFに設定することで、SMFはUPFの転送挙動を細かく制御します。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
N4を本部(SMF)から配送センター(UPF)へ渡す指示書のやり取りに例えます。
- まず、本部と配送センターが業務を始める前に「これから連携します」という開設手続き(PFCP Association Setup)を行います。これは特定の荷物とは無関係な、ノード同士の準備です。
- その後、荷物(PDUセッション)ごとに本部が指示書(N4セッション)を作り、配送センターへ渡します(PFCP Session Establishment)。内容が変わればその都度更新し(Modification)、不要になれば破棄します(Deletion)。
- さらに、相手がちゃんと生きているか定期的に声かけ(Heartbeat)をして、応答が無ければ障害と判断します。
指示書の中身は4種類のルールに分かれます。難しい略語ですが、やっていることは単純です。
- PDR(検出) … 入ってきたパケットが「どのルールに該当するか」を見分ける。
- FAR(転送) … 見分けたパケットをどう扱うか(転送/破棄/バッファ、どこへ出すか)を決める。
- QER(QoS) … パケットに品質(帯域制限・優先度)を適用する。
- URR(計測) … パケットの使用量を計測し、SMFへ報告する(課金や上限管理の材料)。
つまりN4は「本部が現場に渡す指示書の配送路」であり、その指示書の中身が PDR/FAR/QER/URR です。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Protocol | PFCP(Packet Forwarding Control Protocol)— TS 29.244 |
| 下位Transport | UDP over IP |
| ポート | UDP 8805 |
| 特徴 | Node手続き(Association/Heartbeat)とSession手続き(Establishment/Modification/Deletion)の2層。PDR/FAR/QER/URRのルールを搬送。信頼性はPFCPアプリ層の再送で担保 |
なぜTCPでなくUDP+アプリ再送か
PFCPは下位にUDPを用い、メッセージの信頼性(欠落時の再送)はPFCPアプリケーション層自身が担います。TCPのようなコネクション・順序制御のオーバーヘッドを避け、多数のセッションを軽量に扱うための設計です。制御メッセージごとにRequest/Responseを対応づけ、応答が来なければ再送します(具体的な再送回数・タイマ値は実装/構成に依存し要確認)。これは4GのCUPS(Sxインターフェース)から引き継いだ設計です。
Architecture¶
N4がSMFとUPFを結び、制御(N4)とデータ(N3/N6)が分離される様子を示します。
flowchart LR
gNB["gNB (基地局)"]
SMF["SMF (制御)"]
UPF["UPF (転送)"]
DN[(Data Network)]
SMF == "N4 (PFCP / UDP:8805)" ==> UPF
gNB -- "N3 (GTP-U ユーザデータ)" --> UPF
UPF -- "N6" --> DN
classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
classDef uplane fill:#eef,stroke:#66f,stroke-width:2px;
class SMF ctrl;
class UPF uplane;
図の読み方: 太い線(==>)がN4の制御シグナリングで、緑のSMF(制御側)がUPFへ PDR/FAR/QER/URR のルールを配布します。SMF自身はユーザデータを扱いません。実データは gNB からN3(GTP-U)で青のUPF(転送側)に入り、UPFがN6でDNへ抜けます。色分けのとおり、制御はN4、ユーザデータはN3/N6という分離がCUPSの要です。N4のポートはUDP 8805 です。
利用Procedure¶
N4は、まずノード同士を結び、その上に個々のセッションを載せる2段構えで使われます。
- PFCP Association Setup: N4の初手。SMFとUPFがノード間のアソシエーション(連携関係)を確立する(Node手続き)。以降のSession手続きの土台。
- PFCP Session Establishment: PDUセッション確立に伴い、SMFがUPFへ PDR/FAR/QER/URR を初期投入し、N4セッションを作る(Session手続き)。
- PFCP Session Modification: gNB側のN3情報の反映やQoS変更など、確立後のルール更新(Session手続き)。
- PFCP Session Deletion: PDUセッション解放に伴い、N4セッションを削除(Session手続き)。
- Heartbeat: ノードの死活監視(Node手続き)。
PDU Session Establishment では、SMFがUPF選択(UPF selection)の後に N4 Session Establishment でルールを投入します。続いてgNB側のN3 TEIDが返ってきたら N4 Session Modification で反映して、ユーザプレーンを疎通させます。この Establishment→Modification の2段構え を含む詳しい流れは PDU Session Establishment を参照してください(本ページでは手順の詳細は繰り返しません)。
主なMessage¶
N4を流れる代表的なPFCPメッセージです。
| メッセージ | 種別 | 用途 |
|---|---|---|
| PFCP Association Setup Request / Response | Node手続き | SMF-UPF間のアソシエーション確立 |
| PFCP Session Establishment Request / Response | Session手続き | N4セッション確立(PDR/FAR/QER/URRの初期投入) |
| PFCP Session Modification Request / Response | Session手続き | ルール更新(N3 TEID反映・QoS変更等) |
| PFCP Session Deletion Request / Response | Session手続き | N4セッション削除 |
| PFCP Session Report Request / Response | Session手続き | UPF発の報告(URRの使用量報告やパケット到来通知等) |
| PFCP Heartbeat Request / Response | Node手続き | ノードの死活監視 |
各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
N4はPFCP、その下はUDPとして観測されます。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| PFCPメッセージを抽出 | pfcp |
| 下位UDPを見る | udp |
| N4ポートで絞る | udp.port == 8805 |
Decodeの見どころ:
- PFCPの Message Type でメッセージ種別(Association Setup, Session Establishment 等)を識別できます。
- Session Establishment / Modification では、PFCPメッセージ内の IE(Information Element) の中に Create PDR / Create FAR / Create QER / Create URR といったルール本体が入れ子で運ばれます。この「IEの中にルールが詰まっている」構造がN4理解の要です。
- Association Setup / Heartbeat では、SMFとUPFのノード情報(Node ID)や、Recovery Time Stamp 等が確認できます。障害後の再起動検出に使われます。
- ルールのIE構成・適用順序の細部は版により異なり、一部は要確認です。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: 制御/転送分離(CUPS)は後付けのオプションとして導入され、その制御インターフェースが Sxa / Sxb / Sxc でした。上を流れるProtocolは PFCP(TS 29.244)で、SGW-C/U、PGW-C/U、TDF-C/U 間を結びました。
- 5Gでは: SMF(制御)とUPF(転送)の分離を最初から標準アーキテクチャとし、その制御インターフェースが N4 です。上を流れるProtocolは4Gと同じ PFCP(TS 29.244)です。PFCPは4GのCUPSで生まれ、5Gでそのまま標準採用されました。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| Sxa / Sxb / Sxc(CUPS、後付けオプション) | N4(CUPS標準化) |
| PFCP(TS 29.244) | PFCP(TS 29.244、共通) |
| UDP over IP | UDP over IP |
| PDR/FAR/QER/URR で転送制御 | PDR/FAR/QER/URR で転送制御(共通) |
PFCPは4G由来で5Gと共通
PFCP(TS 29.244)は4GのCUPS(Sxインターフェース)のために標準化され、5Gでも同じ仕様がN4に採用されました。プロトコル・ルール(PDR/FAR/QER/URR)は4Gと5Gで共通です。違いは「4Gでは後付けオプション、5Gでは標準アーキテクチャ」という位置づけにあります。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 29.244 — PFCP(Packet Forwarding Control Protocol)。N4/Sxのセッション制御、PDR/FAR/QER/URR等のルール。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N4の定義)
- 3GPP TS 23.502 — PDU Session Establishment 等、N4手続きを含む手続きフロー(章番号は版により変動、要確認)
Summary¶
- N4は SMF ⇔ UPF を結ぶ制御インターフェースで、ProtocolはPFCP。
- 下位Transportは UDP over IP、ポートは 8805。信頼性はPFCPアプリ層の再送で担保。
- 手続きはNode手続き(Association Setup, Heartbeat)とSession手続き(Session Establishment/Modification/Deletion)の2層。
- N4の中核は、SMFがUPFへ配布する PDR(検出)/ FAR(転送)/ QER(QoS)/ URR(計測) のルール。
- N4はCUPS(制御と転送の分離)の要であり、制御はN4、ユーザデータはN3/N6に分かれる。
- 4GのSx(Sxa/Sxb/Sxc)に相当し、PFCP(TS 29.244)は4G由来で5Gと共通。
Next Step¶
- SMF — N4を制御側で終端するNF(UPFへルールを配布)
- UPF — N4を転送側で終端するNF(PDR/FAR/QER/URRを適用)
- PDU Session Establishment — N4のEstablishment→Modificationが登場する手続き
- N3 / N6 — UPFの転送側インターフェース
- Message辞典 / Interface辞典 / Protocol辞典 — 用語の確認