title: N8 — AMF ⇔ UDM(Nudm: UECM / SDM 参照点) description: AMFとUDMを結ぶN8インターフェース。N2/N4と異なりSBI(Service Based Interface)であり、実体はUDMが提供するサービスNudm(UECM/SDM)。HTTP/2+JSON over TLS上で、AMFがサービングAMFを登録(UECM)し加入者データを取得(SDM)する仕組みを、Why→What→Howで解説。 keywords: - N8 - Nudm - UECM - SDM - UDM - AMF - HTTP2 - SBI - 加入者データ - TS 29.503 tags: - Interface - Data - Rel-15 category: Interface
N8 — AMF ⇔ UDM(Nudm: UECM / SDM 参照点)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- N8が SBI(Service Based Interface) であり、N2(NGAP/SCTP)やN4(PFCP/UDP)とはProtocol/Transportが根本的に異なることを説明できる。
- N8の実体がUDMの提供するサービス Nudm(UECM: UE Context Management / SDM: Subscriber Data Management, TS 29.503) であることを説明できる。
- AMFが サービングAMFとしてUDMに登録(UECM) し、加入者データを取得(SDM) する流れを説明できる。
- 「参照点N8」と「サービスNudm」が同じものの2つの見方であることを説明できる。
- 4G(EPC)の S6a(MME ⇔ HSS, Diameter) の加入者データ取得・位置登録部分との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA / SBI と HTTP/2・TLS の位置づけ → Protocol辞典
- N8の両端のNF → AMF / UDM
- 加入者データ取得・サービングAMF登録が使われる手続き → Registration
- Interfaceと参照点の考え方 → Interface辞典
Why — なぜ必要なのか¶
AMFはUEの登録(Registration)と移動管理(モビリティ)を担いますが、「このUEはどんなスライスを契約しているか」「どのエリアへの移動が許可/制限されているか」といった加入者情報を自分では持っていません。これらは加入者データの元締めである UDM が保持します。したがってAMFには、UDMへ加入者データを問い合わせる道が必要です。
さらに、UEがどこかで通信し始めると「このUEは今どのAMFが面倒を見ているか」を、後から他NF(例: 着信のためのSMS配送やUDM主導の処理)が知れるようにしておく必要があります。そこでAMFはUDMに対し「このUEのサービングAMFは私です」と登録します。この加入者データ照会とサービングAMF登録を担う参照点がN8です。N8が無ければ、AMFは契約スライスや移動制限を知らずにUEを扱えず、UDM側も現在のサービングAMFを把握できません。
例え話: AMF=フロアの受付窓口、UDM=本社の会員名簿(マスタDB)です。N8は、窓口が本社名簿を照会して「この客の契約内容は?」と尋ね、同時に「この客の担当窓口はここ(私)です」と名簿へ登録するホットラインにあたります。
Overview — 概要¶
N8は AMF ⇔ UDM を結ぶ参照点です。ただしN8はSBI(Service Based Interface)である点が、N2(NGAP/SCTP)やN4(PFCP/UDP)と決定的に異なります。SBIとはNF同士がWeb API(HTTP)でサービスを呼び合う仕組みで、共通の転送として HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS を用います。
N8の実体は、UDMが提供するサービス Nudm(TS 29.503) です。Nudmには主に2つの側面があります。
- UECM(UE Context Management): AMFが自分をサービングAMFとしてUDMに登録/登録解除する。
- SDM(Subscriber Data Management): AMFがアクセス&モビリティ加入データ(許可スライス=Subscribed S-NSSAI、RFSP index、移動制限 等)を取得し、その変更通知を購読する。
参照点N8とサービスNudmは同じものの2つの見方
3GPPのアーキテクチャ図では 参照点として N8(AMF⇔UDM) が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として UDMのサービス Nudm(UECM / SDM) として実装されます。つまり「N8」と「Nudm」は、同じAMF⇔UDM間の連携を、参照点の視点/サービスの視点で見たものです。どちらも指しているものは同一で、呼び方(視点)が違うだけ、と捉えてください。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
N8を、受付窓口と本社会員名簿のやり取りに例えます。
あなたがネットワークに登録(Registration)しようとすると、受付担当のAMFが動きます。AMFは、あなたの契約内容(どのスライスが使えるか、どこまで移動してよいか)を自分では知らないので、本社の会員名簿であるUDMに問い合わせます(SDM_Get=加入者データ取得)。同時にAMFは名簿へ「このお客様の担当は私(このAMF)です」と書き込みます(UECM_Registration=サービングAMF登録)。契約内容が後で変わったときに知らせてもらえるよう、「変更があったら通知して」とお願いもします(SDM_Subscribe)。
このUDMへの問い合わせは、専用の電話回線(N2やN4のような専用プロトコル)ではなく、社内Webシステム(HTTP)でリクエストを投げて回答をもらうイメージです。これが SBI(Service Based Interface)=NF同士がWeb API(HTTP/2)で会話する仕組みです。要求も応答も、人間に読みやすい JSON という書式でやり取りされます。操作対象(加入データやAMF登録などのリソース)に「住所(URI)」を与え、そこにHTTP操作を投げて取得・作成・購読する作法をRESTfulと呼びます。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Protocol | HTTP/2 + JSON(RESTful)— SBI(Service Based Interface)の共通スタック |
| サービス | Nudm(UECM / SDM)(UDMが提供)— TS 29.503 |
| SBI framework | TS 29.500 / TS 29.501 系(SBIの共通規約・OpenAPI定義) |
| 下位Transport | TCP、TLS で保護(機密性・完全性・認証)— TS 33.501 |
| ポート | SBIの待受ポートは実装依存(NRF登録のエンドポイントで解決)。特定番号は断定しない |
| 特徴 | 専用L4プロトコルではなくWeb技術ベース。HTTPメソッド+リソースURIで操作。RESTful |
N2/N4のような専用L4ではなくWeb技術ベース
N2は NGAP over SCTP:38412、N4は PFCP over UDP という専用の下位プロトコルを持ちますが、N8にはそれらは一切当てはまりません。N8はSBIなので、他のSBI(N7/N10/N11/N13 等)と同じく HTTP/2 over TLS を共通の土台として使います。したがってN8の解析にSCTP/PFCP固有のフィルタやポート番号を流用してはいけません。
Architecture¶
N8がAMFとUDMを結び、UDMが背後でUDRから加入データを取り出し、認証面ではAUSFがN13でUDMと連携する文脈を示します。
flowchart LR
AMF["AMF"]
UDM["UDM"]
UDR[("UDR (加入データ)")]
AUSF["AUSF"]
AMF == "N8 (Nudm: UECM / SDM / HTTP2)" ==> UDM
UDM -- "Nudr (加入データ取得)" --> UDR
AUSF -. "N13 (Nudm_UEAuthentication)" .-> UDM
classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
class AMF,UDM ctrl;
図の読み方: 太い線(==>)のN8がAMF⇔UDMの連携(SBI/HTTP2)で、AMFはここでサービングAMF登録(UECM)と加入者データ取得(SDM)を行います。UDMは自身でデータを保持せず、背後の UDRからNudrで加入データを取り出す(実装によりUDMとUDRが一体の場合もある)。破線のN13は認証に関するAUSF⇔UDMの連携で、加入者データ取得のN8とは役割が別です。N8は「登録と加入データ取得」、N13は「認証情報(認証ベクトル)」という区別に注目してください。
利用Procedure¶
N8は Registration(登録手続き) の中で、AMFがUDMへサービングAMFを登録し加入者データを取得する際に使われます。
- UECM_Registration(サービングAMF登録): UEの登録時、AMFがUDMへ「このUEのサービングAMFは私」と登録する。
- SDM_Get(加入データ取得): AMFがアクセス&モビリティ加入データ(許可スライス=Subscribed S-NSSAI、RFSP、移動制限 等)を取得する。
- SDM_Subscribe(変更通知購読): 加入データが変わったらUDMから通知してもらうよう購読する。以後、変更があればUDMが SDM_Notify でAMFへ通知する。
- De-registration時: UEの登録解放時に、AMFは UECM_Deregistration でサービングAMF登録を解除する。
これらの実行条件・順序・IE等の細部は Release や構成に依存するため要確認です。手順の詳細な流れ(メッセージシーケンス、条件)は Registration に集約されています。手順の細部はそちらを参照してください。
主なMessage¶
N8はSBIなので、メッセージはHTTPメソッド + リソース操作の形を取ります(NGAPのようなprocedureCodeではなくRESTful操作)。代表的なサービスオペレーションは次のとおりです。
| サービスオペレーション | HTTP操作(概念例) | 用途 |
|---|---|---|
| Nudm_UECM_Registration | PUT(リソース登録) | AMFをサービングAMFとしてUDMに登録 |
| Nudm_UECM_Deregistration | DELETE(リソース削除) | サービングAMF登録の解除 |
| Nudm_SDM_Get | GET(リソース取得) | アクセス&モビリティ加入データの取得 |
| Nudm_SDM_Subscribe | POST(購読リソース生成) | 加入データ変更通知の購読 |
| Nudm_SDM_Unsubscribe | DELETE(購読削除) | 変更通知購読の解除 |
| Nudm_SDM_Notify | POST(UDM→AMFへ通知callback) | 加入データ変更のAMFへの通知 |
HTTP操作の対応は概念整理です: 上表の「HTTP操作」は理解のための対応づけであり、各オペレーションの正確なメソッド・リソースURI・呼び出し方向はTS 29.503のOpenAPI定義に従います。厳密なメソッド割り当ては要確認とします。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
N8はSBIなので、キャプチャ上は HTTP/2 として観測されます(NGAP/SCTPやPFCP/UDPのようなL4専用プロトコルは現れません)。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| HTTP/2メッセージを抽出 | http2 |
| ヘッダのパスで絞る(概念) | http2.headers.path(:path に nudm-uecm / nudm-sdm を含む) |
| JSONボディを見る | json(復号後) |
Decodeの見どころ:
- N8は TLSで暗号化されます。中身(HTTP/2ヘッダやJSONボディ)を見るには復号鍵(TLSセッションキー等)が必要です。鍵が無ければ
tlsの暗号化ペイロードとしてしか見えません。 - 復号できれば、HTTP/2の ヘッダ(
:method= GET/PUT/POST等、:pathに.../nudm-uecm/...や.../nudm-sdm/...を含むリソースパス)でオペレーションを識別できます。 - ボディは JSON(加入データ、許可スライス、移動制限、AMF登録情報等)で、人間に読みやすい構造で入っています。
- N2のNGAP(バイナリ、SCTP上)と違い、N8はWeb的(HTTP/JSON)である点が観察の要です。SCTP固有のフィルタ(
sctp.port等)は使いません。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: 加入者データの取得と位置登録(MMEがどのUEを担当しているかの登録)は、MME ⇔ HSS 間の S6a インターフェース(Diameterベース, TS 29.272)で行われていました。HSSが加入者マスタデータを保持し、MMEはS6aで加入データ取得・位置更新(Update Location)を行います。
- 5Gでは: HSSの加入者データ管理の役割を UDM(背後にUDR)が引き継ぎ、S6a相当のうち加入データ取得・位置登録(サービングAMF登録)の部分が N8(Nudm: UECM / SDM) に SBI化されました。DiameterからHTTP/2 + JSON(SBI)へ置き換わっています(TS 29.503)。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| S6a(MME ⇔ HSS の該当部分) | N8(AMF ⇔ UDM) |
| Diameter(専用L4上) | SBI: HTTP/2 + JSON over TLS |
| TS 29.272(S6a) | TS 29.503(Nudm: UECM / SDM) |
| HSS(加入者マスタ) | UDM(+背後にUDR) |
S6aの一部はN13へ: S6aは加入者データ取得・位置登録に加え、認証ベクトルの取得も担っていました。5Gではその認証部分は N13(AUSF ⇔ UDM, Nudm_UEAuthentication) 側に切り出されており、N8(加入データ取得・登録)とは役割が分かれています。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 29.503 — Nudm サービス(UECM: UE Context Management / SDM: Subscriber Data Management, N8)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 29.500 / TS 29.501 — SBI framework(技術規約 / 設計原則・OpenAPI)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N8の定義)
- 3GPP TS 23.502 — 手続き(Registration手続きでのN8利用)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 33.501 — SBIのセキュリティ(TLS等)。個別章番号は要確認
注記(要確認): N8の実体が Nudm(UECM/SDM, TS 29.503)であること、SBI共通framework が TS 29.500/29.501 系であること、参照点N8とサービスNudmが同じ連携の2つの見方であることは、3GPPアーキテクチャの一般的整理です。各サービスオペレーションの細目章番号・正確なリソースURI・HTTPメソッド割り当ては Release により差異があるため個別には要確認とします。
Summary¶
- N8は AMF ⇔ UDM を結ぶ参照点だが、SBI(Service Based Interface)である点がN2(NGAP/SCTP)・N4(PFCP/UDP)と根本的に異なる。
- Protocolは HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS、実体はUDMのサービス Nudm(UECM / SDM, TS 29.503)。
- AMFは UECM で自分をサービングAMFとしてUDMに登録し、SDM で加入者データ(許可スライス・移動制限 等)を取得・変更購読する。
- 参照点N8 = サービスNudm は同じAMF⇔UDM連携の2つの見方(参照点の視点/サービスの視点)。
- 4Gの S6a(MME ⇔ HSS, Diameter, TS 29.272) の加入データ取得・位置登録部分に相当し、5Gでは SBI化(TS 29.503)された(認証部分はN13へ分離)。
Next Step¶
- UDM — N8の相手側。加入者データ管理の中枢
- AMF — N8を利用してサービングAMF登録・加入データ取得を行うNF
- Registration — UECM登録・SDM取得が行われる手続き(詳細)
- N10 — SMF⇔UDM(SMFが同じくNudmで加入データを取得)
- N13 — AUSF⇔UDM(認証情報取得。S6aのうち認証部分に相当)
- Interface辞典 — 参照点の確認